種のときから
仕事が失敗続きで全くついていなかった。
不注意から傷まで負い、暫くは自宅療養をしないといけないらしい。
すっかりふてくされていたとき、カカシが上忍仲間からもらったのは、珍しい植物の種だった。
どんな花が咲くのかは、育てる人間の心がけ次第だという。
手荒に扱うと悪臭を放つ醜い花となり、こまめに世話をすると見目麗しい花となる。
花を愛でる趣味などなかったが、その話を聞いたカカシは少しだけ興味を引かれて種を受け取った。
どのみち家でのんびりと過ごさなければいけないのだから、気晴らしに丁度良い。病院から戻ったカカシは、小さな鉢植えに土を入れてさっそく種を植えてみる。
「早くおーきくなれよー」
窓際に置かれた種に、日がな一日、声を掛けた。
出来ることなら、綺麗な花を見たいに決まっている。
忍犬達は手間を掛けるほどカカシに心を開いて懐いてくれた。
だとしたら、種も少しは嬉しいという気持ちを持ってくれているだろうか。