彼が世界の全てだと

 

さくらは好奇心が旺盛だった。
カカシの本棚から巻物を引っ張り出しては、飽きずに長い時間眺めている。
文字が分からないのだから、絵や模様がある部分だけを見ているだけだ。
だが、カカシはそうした場面に出くわすと、何かと理由を付けてさくらから書物を没収する。
テレビやラジオはもともと部屋にない。
さくらが発芽してからは、忍犬達も呼び出していなかった。

「さくらは、外のことなんて知らなくていいんだよ」
さくらの頭を撫でるカカシは、優しく言い聞かせ、その額に口づける。
何も見せずに、誰にも会わせずに、自分のことだけを思っていればいい。
可愛いさくらは耳元で囁かれる優しい声に安堵して体を預けてくる。
冷たかったさくらの肌は人と同じ温もりを持つほど成長していた。