開花

 

種は無事に芽を出し、育ち、花を咲かせた。
櫛を使わずとも真っ直ぐな桃色の髪は腰のあたりまで伸び、肌は白くすべらかで、柔らかな唇はいつも笑みをたたえている。
匂い立つばかりの美しい女性の姿になったさくらを、カカシは目を細めて見つめた。
「さくら」
名前を呼ぶと、さくらは嬉しそうに笑ってカカシにすり寄ってくる。
「愛してる」
カカシが呟く愛の言葉を、彼の腕の中でさくらは目をつむって聞いている。
意味は分からなかったが、カカシの優しい声が好きだったから、こうしているだけで十分だった。

さくらを抱きしめるカカシの顔には、笑顔はない。
さくらが綺麗になればなるほど、胸が痛くなる。
種が成長していくのと同じように、時は無情にも流れていくのだ。