儚きもの
任務の帰り道、露店の前で立ち止まったカカシは、ふと売り物であるアクセサリーに目をやった。
さくらと同じ瞳の色の、可愛らしいデザインのブローチがある。
さくらの白い肌にも似合いそうだった。
迷わずそれを購入したカカシは、急ぎ足でさくらの待つ家へと戻る。
さくらの喜ぶ顔が目に見えるようで、自然と口元には笑みが広がっていた。「ただいま」
声を聞くとすぐに飛び出してくるはずのさくらが、この日はまるで気配を感じさせない。
そして、カカシの予感は的中する。
足下にあるのは、さくらの残骸であろう、萎びた花弁。
必要のなくなったブローチは、枯れた花と一緒に庭に埋めてやった。
カカシの気晴らしとして上忍仲間から譲られた種は、存分に役目を果たしたが、それだけに悲しい終幕だった。