そして、種

 

「なあ、あの種、どんな花が咲いたんだ?結局見せてくれなかったけど」
「・・・・可愛い花だったよ」
「そんなんじゃ分からないっての」
眉間に皺を寄せた上忍仲間を、カカシは笑って見上げる。
控え室の机に並べられた書類には、火影から頼まれた任務について詳しく書かれていた。
カカシを暗部から引き抜いてでも任せたい仕事らしい。
九尾の妖狐を体の内に飼っているナルトとうちは一族の生き残りサスケ、この二人のお守り。
そして・・・・・。

「さくら・・・」
小さく呟くなり絶句したカカシを、上忍仲間は怪訝そうに見やる。
カカシが驚愕の表情で凝視しているのは、これから担当することになるくノ一の、写真付きの履歴書だ。
「春野サクラ・・・、随分と優秀な成績でアカデミーを卒業したみたいだな。彼女が、どうかしたのか?」
「・・・・・」
すぐには声が出せなかった。
育てた種と、名前も、容姿も、うり二つの少女がそこに存在している。
彼女を失ったときでさえ流せなかった涙がこみ上げてきそうで、カカシは唇を強く噛みしめた。

「・・・可愛い、子だと思って」
「そうか?悪くないけど、普通だろ」
「可愛いよ」
履歴書を間近で見据え、首を傾げた上忍仲間にカカシは穏やかに笑って言った。