■崩壊アシンメトリー

 

アンバランスな光景だった。
最も憎むべき人間と。
最も愛すべき人間が。
二人並んで自分を見つめている。
自分を牽制するため、人質として捕らえられたのかと思ったが、そんなはずはない。
兄は自分の何倍も強いのだ。
彼のために全てを投げ打って、力だけを求めてきた。
そしてようやく見つけ出したその場所に、何故サクラがいるのか。

「愚かなる弟よ」
内心の動揺を察したのか、兄の口から低い声がもれる。
その顔は優しく微笑んだように見えた。
「まだ、足りないか」