盂蘭盆 2


「右、斜め45度。あと10mくらいの距離だよ」

 

サクラは林の中、指示された場所へと一直線に向かう。
果たして、その場所にターゲットである三毛猫はいた。
一度姿を確認できれば、もうどこに逃げようとも無駄だ。
スライディングしたサクラは、暴れる三毛猫を何とか掴まえる。

『先生―、ターゲット、確保―!!』
トランシーバーを使って、サクラはさっそく担任のカカシに向かって呼び掛けた。
『OK、よくやったサクラ。7班、A地点に集合な』
『ラジャー!』
『・・・了解した』
カカシの声に続いて、ナルトとサスケの声がする。
久々の手柄に、サクラは三毛猫を腕に抱えたまま、にっこりと微笑んだ。

 

 

「サクラちゃん、凄いってばよー。何で猫の場所、分かったの」
「別に、理由なんてないわよ」
そっけなく答えながらも、サクラは得意げな顔つきだ。

今日の任務は、森に逃げ込んだ三毛猫探し。
森のどこかにいるという情報しか手がかりはなく、広い森をくまなく探すのに何日かかるか分からないという状況だったのだが、サクラは個別探索を始めて30分もしないうちにターゲットを見つけだした。
まるで、発振器を持っていたかのように。

「あなたのおかげよ・・・」
サクラがひそひそ声で話しかけると、その人物は頭に手をやって照れ笑いをした。
サクラの傍らに立つ、金髪の青年。
彼の姿は、サクラ以外の人間には見えていない。
サクラの活躍の影には、彼の人力があった。
実は猫を見付けたのは彼の方で、サクラは彼の指示に従って走っただけだ。

「幽霊も役に立つのねぇ」
サクラはしみじみと呟く。
そのサクラの後ろ姿を、カカシとサスケが凝視していることに、彼女は気付いていなかった。

 

 

「・・・サクラの隣り、何かいないか」
「あ、お前も気付いてたんだ」
カカシは感心したようにサスケを見やる。
たとえ姿形は見えずとも、感覚の鋭い人間はそこに何らかの気配を感じられる。
鈍いナルトは別だ。

「放っておいて、いいのか」
「いいんじゃない。別に」
カカシは頭の後ろで手を組むと、のんびりとした口調で言う。
「サクラに害を及ぼしているようには見えないし。もうちょっと様子見ておこうよ」
「・・・・」
不満げな顔で見詰めてくるサスケに、カカシは苦笑した。
「お前は心配性だよね。見かけによらず」

 

 

 

 

「もー、しっかり付いてきてよね!」
「・・・すみません」
サクラにしかりつけられ、幽霊はしゅんとなる。
ナルト宅へ夕食を作りに行く途中、買い物客で賑わう繁華街を歩いたのが間違いだった。

幽霊の彼は、方向音痴だ。
サクラと出会ったのも、道に迷ってナルトの家にたどり着けず途方に暮れて座り込んでいるときだった。
その彼が、珍しい商品を目にするたびに、サクラの存在を忘れてふらふらと店に入っていってしまう。
消えた彼を捜すサクラとしては、いい迷惑だった。
何しろ、幽霊なのだからいなくなっても人に訊ねることができないし、名前も呼べない。

 

「もう、離さないからね!!」
サクラは幽霊の掌を掴むと、ぐっと握り締めた。
そして怒りの形相で彼を見上げたのだが、どうしてか、彼はにこにこと微笑んでいる。

「いやぁ、死んでから誰かと手を繋いで歩けるなんて、思わなかったなぁ。しかも、可愛い女の子と」
「・・・・」
脳天気な幽霊に、サクラは呆れかえる。
だが、サクラが見詰める間にも、彼の笑顔は寂しげなものに変わった。

「あの子とも、手を繋いであげたかったんだけどね・・・・」

 

脳裏をよぎるのは、彼とよく似た金の髪の少年。
誰のことかは、言わずともサクラにも分かっていた。


あとがき??
続き、どうしよう・・・。(まさに手探り状態)
四代目の一人称って何だろうかと思ったんですが、うちではごく親しい人と話すときは「僕」、普段は「俺」、公式の場所では「私」としました。
ごめんなさい。創作の人物で。
彼がナルトのお父さんかどうかは、あいまい・・・・みーまいん・・・。


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