盂蘭盆 3


「野菜もちゃんと食べなさいよ!」

ナルトの家の食卓には、今日もサクラの檄が飛ぶ。
「もー、ぼろぼろこぼしてるってば。あんた、お箸の持ち方変なのよ」
几帳面なサクラはだらしない格好で食べるナルトが気になるらしく、小言を繰り返す。
だが、サクラと向かい合わせの席で食事をするナルトは、満面の笑みだ。
口をつぐんだサクラは訝しげに眉を寄せる。

「・・・何よ?」
「いや。サクラちゃん、俺の母ちゃんみたいだなぁって思って」
邪気の無い笑みで言うナルトに、サクラは顔を真っ赤にして立ち上がった。

「あんたと同じ年の私が、何でお母さんなのよ!!失礼ね!それに、私はこんな手のかかる人とは結婚しないわよ」
彼のいる方角へ指を向けてから、はたと気づく。
サクラの隣に座っている幽霊の姿は、ナルトには見えていない。
三人で食事をしている気になっているのは、サクラだけだ。

「サクラちゃん?」
案の定、首を傾げるナルトに、サクラは大人しく席に付く。

 

「・・・もう帰るから、家まで送ってってよ」
「いいけど」
ナルトは不思議そうな顔をしながらも、残っている食事を口にかっ込む。

これが三日目の夜。
幽霊を交えての夕食は、今夜が最後だった。

 

 

 

雲の層が広がっているせいで、月も星もまるで見えない夜空。
道々にある電灯の柱を頼りに、ナルトとサクラはとぼとぼと歩く。

 

「僕、もうそろそろ帰ります」

ふいに聞こえた声に、サクラは横を見る。
金の髪の青年が、寂しげな笑みを浮かべていた。

「笑った顔を沢山見られて、嬉しかったです。有難う」
静かに別れを告げる青年に、サクラは胸がズキリと痛んだ。
ナルトのことをこれほど思っているのに、ナルトには彼の姿が微塵も見えない。
部外者の自分を挟んででしか、意思を伝えられないのがもどかしい。

 

「ナルト、手!」
「え!?」
「手、出して」
突然のことに、ナルトは戸惑いながらも片手を差し出す。
サクラはその手を握り締めると、空いている方の手で青年の手を掴んだ。

「手を繋いで行きましょ。ちょっとの間でいいから」
サクラは両側にいる二人に対して言う。
ナルトと手を繋ぎたかったと言った青年。
間接的とはいえ、これはその夢が叶った瞬間だった。

「何、サクラちゃん。暗いの、怖いの?」
「そうよ」
見当はずれのナルトの言葉に、サクラは素直に頷く。
幽霊の青年の微かな笑い声が、サクラの耳の届いたような気がした。

 

 

 

翌朝、目覚めてすぐにサクラは部屋の窓を開けた。
空は澄み渡っているのに、サクラの心はまるで晴れなかった。
心に、ぽっかりと大きな穴があいたようだ。
空気のように近くにあった、彼の存在がないだけで、風景がまるで違って見える。

 

「また、来年になったら会えるのかしら・・・」
「誰に?」

耳元で聞こえた声に、サクラは大げさに飛び上がった。
慌てて振り返ると、そこには申し訳なさそうな顔で頬をかく青年がいる。
驚きのあまり、サクラは口をぱくぱくとさせるだけで、声が出ない。

「道に迷って、帰りそこねちゃった。天の扉は一年に一度しか開かれないんだ」

幽霊の青年は、ナルトと同じ、罪の無い笑顔を浮かべて言った。

 

「来年の盂蘭盆まで、お世話になります」


あとがき??
この四代目、モデルは「うる星やつら」の潮渡渚くんかもしれない。
潮渡渚。
父と共に“氷うに金時”を完成させようとしたが、166杯目で死亡。(と書くと、もう何が何だか。死因はかき氷の食べ過ぎ??)
親のエゴで死んじゃったというと、可哀相ですね。
最初は幽霊だったのに、うにの涙に触れて生身の体を取り戻した(つまり生き返った)幸運な人。

渚くんは女装の麗人。美少女的な外見に反し、男らしく腕っぷしは強く、無敵。
許嫁の竜之介くんより強いのが、また魅力でした。何があっても女の子には手をあげない姿勢がまた良し。
男装の麗人の竜之介くんとは、性別逆転カップルでお似合いだと思いますvv
もう、何のあとがきなんだか・・・・。

四代目は成仏していないので、こんな風に盂蘭盆に帰ってくることはないので、まさにパラレル。
サクラは彼が四代目だって、全く気づいていないですね。
来年といわず、ずっとそばにいてもらいたいものです。


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