エンジェル・ブルー W
快晴の空の下、サクラはいつものように屋上で弁当の包みを広げる。
階下の校庭では、楽しげな生徒達の声。
早めに昼食を終えた生徒が球技に夢中しているのだろう。
対照的に、憂い顔のサクラは大きくため息をつく。青い空を見上げると、今でもカカシが現れたときのことを鮮明に思い出す。
あれは3ヶ月も前のこと。
そして、カカシが煙のように姿を消したのは、それから2ヶ月後。サクラは知らなかった。
人間に愛を告げた天使が消えてしまうということを。
天使にとって、それがどれほど勇気のある決断なのかも。だから、驚くと同時にただ泣くことしか出来なかった。
あの後の2、3日の記憶は、辛すぎて、思い返したくない。
「何で泣いてるの?」
すぐ傍らで聞こえた声に、サクラは目元を擦る。
「この頃先生が遅刻ばかりするから」
言いながら仰ぎ見ると、眉を寄せるカカシと目が合った。
「怪我をした生徒が運び込まれて、来れなかったんだよ」
「冗談よ」
隣りに座ったカカシに、サクラはぴったりと寄り添う。
温かい体がカカシの存在を確かに伝え、サクラはほっと息をつく。「カカシ先生。ずっと訊きたかったんだけど、どうして私を選んだの。100人目に」
「顔が可愛かったから」
カカシの即答に、サクラは頬を膨らませてカカシを見上げる。
「・・・私、真剣なのよ」
俺も真剣なんだけど、と思いながら、カカシは苦笑してサクラの頭を撫でた。「声が綺麗だったからだよ」
「声って・・・・別に普通だけど」
「その声じゃないんだ」
言いながら、カカシは天上界へと続く青い空を見詰める。「天上で耳を澄ますとね、地上の人達の心の声が聞こえてくるんだ。思念が混ざっちゃって正確に何を言ってるのか分からないけど、おおよその感情は伝わってくる。ガチャガチャうるさかったり、ぼそぼそ小声だったり、本当にいろんな声。その中で、サクラの声は小さかったけど、不思議と耳に残った」
言葉を切ると、カカシはサクラへと目線を下げた。
「どんな人間の声かと思って下を覗いたらサクラが屋上にいる姿が見えて、次の瞬間にはもう地上に降りてたんだ」
「ふーん・・・」
カカシの話を理解することができず、サクラは曖昧に呟く。
そのころ、はるか上空の天上界では、アスマと仲間の女天使の紅が二人の様子を水晶球に映していた。
「結局、カカシは上級天使になれたんでしょ」
「ああ。サクラの恋を成就させて、100の願いを叶えたからな」
「でも、カカシは手に入れた上級天使の力を使って人間になった・・・」
アスマは幸せそうに寄り添う二人を見ながら乱暴に頭をかく。
「全く!前代未聞だよ」上級天使は最も神に近い存在。
その能力に、限界はない。
だけれど、永遠の命とその力を捨てて人間になろうという上級天使は今までいなかった。
「でも、何でカカシは塵にならなかったのよ?人間に愛の告白をしたのに」
「俺も、不思議に思って神様に訊いてみたんだよ。そうしたら、何て答えたと思う?」
首を振る紅に、アスマはつまらなそうに鼻を鳴らす。「二人が赤い糸で結ばれている場合は例外なんだってさ」
あとがき??
元ネタは『ぽーきゅぱいん』。あちらは天使ではなく小人さん。
タイトルは同じくひうらさとる先生の作品から取りました。
誰かカカシ先生の親友を登場させたいと思ったのだけれど適当な人がいなくて、代理でアスマ先生。
別人でごめんなさい!!
ガイ先生の方がまだキャラに合ってたか・・・。(遠い目)まゆ様。
素敵な企画に参加させて頂いて、有難うございました。