宝石姫 1
最初にサクラに声をかけたのは、いじめられていた彼女への同情心。
泣くことでしか自己主張をできない。
いてもいなくてもどちらでもいい。
まるで。
地面に転がっている石ころみたいな子だと思った。いじめっ子から庇う代わりに、サクラは頼めば何でもやってくれた。
面倒くさい宿題も、掃除も、買出しも。
私は便利な子分ができたつもりだった。
だけれど。
サクラがただの石ころでなかったことはすぐに知れた。
一躍アカデミーのトップの学力を身につけたサクラ。
外面的にも。
もともとの顔の作りが良かったサクラは、少し手を加えただけで見違えるほどあかぬけた。
皆が騒ぐほどに。自信をつけ、明るく積極的に行動するようになったサクラの周りには、自然に人が集まる。
サクラが注目を浴びるたびに。
こみ上げる焦りの感情。
サクラは日々成長し、どんどん綺麗になっていく。
もう、彼女は石ころではなかった。ぴかぴかに光る。
宝石。
たぶん、それはサクラが最初から持ち得ていたもの。
出会った頃は、磨かれていない原石だっただけで。
ある日、私達はつまらないきっかけで、仲たがいした。
でも、その下地となるものは以前からあったのかもしれない。
私がサクラを昔のままの、頼りなげな子だと思っているかぎり。
理由は何であれ、私達は離れることが約束されていた。私の後ろに隠れていたサクラは、もうどこにもいない。
私がいなくても。
サクラは、一人で歩くことができるようになってしまった。サクラがもう少し馬鹿で。
もう少しブスで。
もう少し弱かったら。ずっとずっと一緒にいられたのに。
石ころだった頃のサクラを。
自分を必死に慕ってくれていた、いとおしい存在を。私は懐かしく思い出す。