宝石姫 2


7班の任務終了後、カカシはある人物から呼び出しを受けた。
人気のない裏山に。
アカデミーのすぐ近くにあるその場所は、生徒達の演習にも使われる。

カカシが遅刻して現れると、呼び出した人物は不満も露わにカカシに対峙した。
枯草がカサカサと音を立てて舞い、決闘さながらの情景。

 

「私のサクラに手を出さないでよね!!」
人差し指を突きつけて、いのはびしっと言い放つ。
「あれー?」
対して、カカシはとぼけたような声を出し、首を傾けた。
「いのちゃんはサクラとケンカ友達なんじゃなかったの?」
「それは立前よ!!私は好きな子をいじめちゃうタイプなの!私の方が先に好きになったんだから、サクラは私のなのよ!!」
捲し立てるいのに、カカシはようやく事情を呑み込んだ。
だからといって、納得できるかというと、話は別だ。

「好きになるのに、順番なんて関係ないでしょ。サクラはものじゃないんだし、選ぶのは彼女だよ」
的確な指摘。
思わず言葉につまったいのに、カカシは薄く微笑んだ。
「女の子同士なんてつまらないよ。非生産的だし」
「笑顔でセクハラ発言してるんじゃないわよ!!!」
いのは怒鳴りながらクナイを投げつけたが、カカシは簡単にそれを受け止めた。

「本気?」
クナイを手にしたまま、カカシはいのにむかって問い掛ける。
声は笑いを含んでいるが、目はそうではない。

売られたケンカは買う。
それがカカシの信条だ。
また、いのも上忍相手に臆することなく言った。

「勝負よ!!!」

 

とはいっても、力量では大きな差のある二人だ。
勝負はサクラに関すること。
どれだけ、サクラのことをよく知っているかというクイズ形式。
負けた方はもちろん、サクラを諦めるという条件で。

ジャンケンの結果、先に質問をするのは、いのになった。

「サクラの好きな料理は?」
「金目鯛の甘辛煮」
「サクラの趣味は?」
「読書と手芸で小物作ること」
「サクラのお尻のほくろの数は?」
「三つ」

間髪いれず、いのは再びクナイを放つ。
「何でそんなこと知ってるのよ!!」
易々といのの攻撃をよけたカカシは、怒り心頭のいのに向かって「えへへー」と可愛らしい笑顔を向ける。
カカシにとっていのは格好のからかい対象なのだが、頭に血が上っているいのは分からない。

 

より険悪なムードが漂う中、二人の耳に入った人声。

「カカシ先生―。どこー??」
それはまさしく、争いの原因となっているサクラのものだ。

いのが振り返ると、ちょうどサクラが二人の姿を見つけたところだった。
木々の間から、遠目にもサクラが驚きに目を丸くしているのが分かる。
「いーところに来たねー」
おいでおいでというように、カカシは手招きをする。

カカシは事前に裏山に向かうことをサクラに知らせていた。
帰りの遅いカカシを心配して、サクラは捜しに来たらしい。
歩み寄りながら、サクラは二人の顔を交互に見た。

「・・・変な取り合わせ」
ぼそりと呟くサクラに、カカシはにこにこと笑いかける。
「そお?」
言葉と同時に、カカシはサクラの腕を引く。
全く自然な所作で、サクラは背中からカカシに抱きすくめられた。

 

「いのちゃんの好きな人について話してたんだよ」
「え、サスケくん?」
間を空けず、サクラは即答する。
「そうそう」
分かっていながら、カカシはさも楽しげに声を出した。
「片思いは辛いよねー」

反論しようにも、それでは押し隠した胸のうちをサクラにさらけ出すことになってしまう。
歯噛みするいのはカカシを睨みつける。

「いの、どっか身体の調子でも悪いの?真っ青だけど」
いのの変化に気付いたサクラは、彼女に気遣わしげな視線を向けた。
その背後では、大人気なくいのに向かって舌を出すカカシがいる。
神経を逆撫でするその行為に、ついにいのがキレた。

「あんたなんか大嫌い!!!」

それはもちろん、カカシに向かってぶつけた言葉だ。
しかし、二人の確執を知らないサクラがそのことに気付くはずもない。

「な、何ですって!!」
思わず握り拳を作ったサクラに向かって、正確にはその後ろにいるカカシに向かってあかんべえをすると、いのはそのまま駆け出した。
怒りに顔を赤くしたサクラだが、いのの後ろ姿はみるみるうちに遠ざかっていく。

 

もともと追いかける気がなかったのか、サクラは身動きせずにその場に立ち尽くす。

「昔はああじゃなかったのになぁ」
ため息混じりの声。
カカシの腕に手を添えると、サクラは気落ちした様子で言った。
「なんか、私が何かするたびに怒ってる気がする」
「いーじゃん、別に。サクラには俺が付いてるんだし」
言いながら、カカシはサクラを抱く腕に力を込める。

「・・・そうね」
カカシを振り返り、サクラは寂しげに笑った。


あとがき??
カカシ先生のいじめっ子――!!大人気ないぞーー!!!
「非生産的」発言は『南国少年パプワくん』でのマジック総帥の言葉です。
ホ○に向かって言った言葉。(笑)

本当に書きたかったのは3なのだけれど、書ききる自信がないので、2で最後。
使えなかったエピソードはワンピのサンナミ駄文で発散させます。
最初で最後のいのサクでした。
逃げ!


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