夏祭り
任務の帰り道、カカシは道端に貼られたポスターに立ち止まった。
『第××回 木ノ葉隠れの里、花火大会』
「・・・こんなの毎年やってたんだ」
「そうよ、知らないの?夏の終わり頃に開催されるの。去年は雨が降って延期になっちゃったんだけど、今年は大丈夫みたいね」
サクラはカカシの隣りで同じくポスターを見ながら声を出す。
ここのところ、木ノ葉隠れの里は雨も降らず快晴が続いている。
花火の行われる河川敷には、ご苦労なことに一週間前から場所取りをしている人がいるくらいだ。
「屋台も出て、毎年ものすごい盛り上がるんだから」
「・・・ふぅん。サクラも行くの」
「うん。おばあちゃんが私のために浴衣を縫ってくれたから、それを着て行くつもりよ」
にこにこと嬉しそうな笑顔でサクラはカカシを見上げる。「先生は行かないの?」
「たぶんね」
「何で」
問われて、カカシは言葉に詰まる。
特に理由はないけれど、サクラは答えを待っている様子だ。
「・・・行ったことないんだ、お祭りとか」
「え、でも小さいときに誰かと一緒に行ったりとか」
「連れて行ってくれる人、いなかったから。任務でそれどころじゃなかったし」
言った瞬間に、まずいとは思った。
サクラの表情が、見る間に悲しげ曇ったから。
案の定。
花火大会当日、サクラの扇動で会場へと連れ出されるカカシがいた。「俺ねー、人混みとか大嫌いなのよ」
「たまにはいいでしょ」
往生際が悪く不平をもらすカカシに、サクラは問答無用とばかりに腕を引っ張った。
天候に恵まれたこともあり、来場者は去年より多いようだ。
河原へと続く道はすでに押し合うほど混雑し、身長の低いサクラはすぐに人混みに流されそうになる。
「サクラ」
伸ばされた手に、サクラはしがみつくように掴まった。
ただでさえ動きを制限される浴衣、カカシの支えがなかったら転倒していたことだろう。
「離すなよ」
「うん」
上手く人の間をすり抜けて通るカカシの後ろを、サクラは必死に付いてまわった。何とか河川敷にたどり着いたものの、当然二人が座る場所などない。
他の客に混じっての立ち見となったわけだが、それでも打ち上げ花火は観客の目を満足させるに十分な内容だった。「先生も本当は花火大会に興味があったんでしょ」
花火の打ち上がる合間、サクラは傍らのカカシに問い掛ける。
「え、何で?」
「だって、花火大会の話、楽しそうに聞いてたじゃない」
「・・・・」
カカシはどう返事をしていいか分からず押し黙る。確かにサクラの話は楽しく聞いていた。
だけれど、あれは嬉しそうに話すサクラを可愛いと思っていただけで、話の内容の花火大会に興味があったわけではなかった。
カカシはサクラから視線を逸らすと、再び頭上の花火を見上げる。
「・・・まぁ、そういうことにしておこうか」
カカシの小さな呟きに、サクラは不思議そうに顔を傾けていた。
帰り道、サクラはカカシに買って貰った綿飴の袋を片手に、ご満悦な様子だ。
だが、その表情はふとした瞬間に心細いものに変わる。「先生、花火の後って何だか寂しいと思わない?夏が終わっちゃう感じで」
「そう?」
とぼけた声を出すカカシに、サクラは思わず口を尖らせた。
「情緒がないわね!」
「だって俺寂しくないもん」
カカシはサクラを見下ろし、にっこりと微笑む。
「サクラも今は寂しくないだろ」
「・・・・うん」
どうしてか、カカシの言うとおりだ。
頷くサクラに、カカシは微笑したままその手を強く握り返す。やがて人波が途切れても、サクラの家につくまで二人の手は繋がれたままだった。
あとがき??
・・・・らぶらぶにしたつもりなのですが、どうでしょう。(は、恥ずかしい(>×<))
行きと帰り、花火を見ている間まで、彼らはずっと手を繋いでいたようです。
カカサクで好きに書いて良いとのリクエストでしたので、こんな感じになりました。41000HIT、宵涼様、有難うございました。