レプリカ 1


「え、先生、一緒じゃないの」
「うーん、悪いなぁ。今日はお前達だけで行ってくれ」
あからさまにがっかりとした顔のナルトに、カカシは苦笑しながら頭をなでる。

7班の今日の任務はとある庭園の雑草取り。
昨日からの引き続きの作業で、上忍が絶対に付いて行かなければならない任務ではない。
そして、今日はカカシに別件の重用任務が入っていた。
内容は、さる大名家の家老の一日護衛だ。

 

「昔、世話になった人からの依頼でね。俺がご指名されたから代わって貰うわけにいかないのよ」
「でもでも、先生がいないと心細いってばよ」
「サクラもそう思う?」
カカシはナルトの傍らにいるサクラに話を振る。
「え、そ、そうね」
戸惑いながらもしっかりと返事をするサクラに、カカシは微笑を返した。

「実はな、お前達のためにいいものを用意してきたんだよ」
言いながら、カカシは懐から紙切れを一枚取り出す。
片手で素早く印を組むと、カカシは呪をこめた紙から手を離した。
すると、たちまちに紙切れは形を変化させていく。
カカシとうり二つの、人間の姿に。

「あれ、カカシ先生が二人!でも分身の術じゃないよね」
「符術だよ」
目を丸くするナルトに、カカシは教師らしく説明をする。
分身の術のようにチャクラを多量に必要としない、便利な術だ。
前もって準備が必要なことと、作り出された人型が術者の半分ほどの能力しか備えていないことが難点だが、利用価値は十分にある。

「こいつがお前達に付いていくから、安心しろ」
カカシが彼の背を叩くと、彼は丁寧に頭を下げた。
「よろしくお願いします」
「お前達の言うことを聞くように作っておいたから。ま、頑張れよ」

カカシは下忍達の話を聞かずに、そのまま姿を消した。
符術で作ったかかしを下忍達に託して。

 

 

「・・・・カカシ先生なのに、カカシ先生じゃないなんて変な感じ」
「そう、便利でいい感じだと思うよ。本物よりいいかも」
「もー!!」
のんきなナルトに、サクラはその頭をぽかりと叩く。
彼らの視線の先、いつもは下忍に対しアドバイスはするが手伝わないカカシが、今はせっせと草むしりに勤しんでいる。
ナルトが手伝うように彼に命令したからだ。
カカシの言ったとおり、彼は下忍達の言葉に何でも従うようだった。
だが、サクラはそれが何だか面白くない。

「あ、サスケくんまで!!」
気付くと、かかしはサスケの分担である場所で作業をしていた。
「便利だぞ」
水筒を片手に二人のところにやってきたサスケは、涼しい顔で言う。
良いようにかかしを利用している二人に、サクラは大きくため息をついた。

 

「サクラさんは、何かして欲しいことはないですか?」
ナルト達と違い、何の命令もせずに黙々と草むしりをするサクラにかかしは気を使っているようだ。
サクラは眉をひそめてかかしを振り返る。
「・・・・それ、やめて」
「え?」
「さんを付けるの。ただのサクラでいいわよ」
「でも・・・」
「それがいいの。それと、敬語もやめてね」
サクラはびしりと言い放つ。

かかしは少し困ったような表情をしたが、それも命令のうちと判断したらしい。
「じゃあ、サクラ。これ、いる?」
かかしはサクラのためにと持ってきたジュースの缶を彼女に差し出す。
柔らかく微笑むかかしを見て、偽者だと分かっているのに、サクラの胸は熱くなる。
赤い顔で頷いたサクラを、かかしは優しい笑顔で見詰めていた。

 

 

かかしの頑張りのおかげか、夕暮れを待たずに7班の任務は終了した。
あとはカカシに代わって一日の報告をし、自宅に帰るだけだ。
そして、並んで街路を歩く7班に、走り寄る影が一つ。

「サクラ!!!」
呼び声に振り向くと、遠目に、いのがこちらに向かって駆けて来るのが見える。
何をそんなに急いでいるのかと思うほど、全速力だ。
そしてサクラ達のすぐ近くまでやってきたいのは、かかしの姿を見るなりピタリと足を止めた。
「あ、これ、符術で作ったカカシ先生なの。本物じゃないのよ」
何やら驚愕しているいのに、サクラは傍らのかかしを指差して言う。
サクラはいのがどこかで本物のカカシに出くわし、それで驚いているのかと思った。

「そ、そうなんだ」
いのは胸に手を当ててホッと息を付く。
「何、用件は」
「死んだのよ」
いのは単刀直入に切り出した。
突然の訃報に、サクラの顔はにわかに曇る。
いのがあれほど慌てて走ってきたところを見ると、自分達のごく身近な人間ということだ。
「誰が?」
「カカシ先生」


あとがき??
どうやらシリアスだったらしい。
サクラが泣く話は書きたくないんですけどね。うーーん。
ちょっと暗め。先生、死んじゃったし。カカサクというより、サクカカか。
・・・・ギャグの予定だったのにな。

本物はカカシ、偽者はかかし、ということで。


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