カリプレ


カカシが符術で作った偽者と入れ替わったのは、遊び心が少し。
そして、サクラと一緒にいたいという気持ちが大半。

 

「お前が本物だろ」

偽者と本物をじっと見詰めていたサスケは、任務地につくなりずばりと言った。
この術は見る人が見れば、すぐにばれてしまう。
だけれど、まさか下忍に一目で看破されるとはカカシも予想外だった。
「・・・何のことでしょう」
それでもカカシが空とぼけていると、サスケはすぐに意味深な笑みを浮かべた。
嫌な予感に、カカシは頬を引きつらせる。

「喉が渇いたから、何か買ってきてくれ」
気安く命じるサスケに、カカシは当然不満気な顔になる。
「何で俺が・・・」
「火影のトマト顔が頭に浮かぶなぁ」
「・・・・」

瞬時にカカシの脳裏をよぎった、激昂した火影の姿。
大事な任務を反故にしたと分かれば、どやされることは必至だ。
ただでさえ、他の上忍に比べてカカシは火影を怒らせる回数が多い。
トラブルはなるべく避けたいところだ。

「・・・・いい性格してるな、お前」
「有難う」
サスケは珍しく晴れ晴れとした笑顔を見せる。
ばらされたくなかったら、黙って言うことを聞けというところか。
何も知らずに命令するナルトと違い、本物だと分かっていて嫌がらせをしてくるサスケの方がよっぽど質が悪かった。

 

普段、下忍達をいいように使っているツケが来たのか、カカシは一日草むしりに精を出すこととなった。
だけれど、こうして皆と一緒に汗を流すのも悪くない。
カカシは日頃自分が木陰の下で本を読んでいる間、下忍達は大変だったんだんだなぁと初心に返ったりもする。

ふと気付くと、休みも取らずに作業を続けるサクラの姿がカカシの目に入った。
思えば、サクラとはろくに話もしていない。
カカシはサクラと一緒にいる時間を作ることが当初の目的だったことを思い出す。

「サクラさん」
名前を呼ぶと、サクラはあからさまに不機嫌な表情で振り返った。
一瞬ひるんだカカシだったが、すぐに笑顔を作る。
「サクラさんは、何かして欲しいことないですか?」
カカシが一生懸命にサクラに話し掛けても、サクラはつっけんどんな態度だ。

サクラはナルトやサスケと違って、どうもレプリカの存在を疎んじているようだった。
おそらく、レプリカのカカシの言葉使いや態度がよそよそしくて、別人のようで嫌なのだろう。
つまり、本物に側にいて欲しいということ。
サクラが自分のことを大事にしているのだと分かって、カカシは幸福な気分だった。

 

 

午後になり、7班の任務は早々に終了した。
そして報告に行く道すがら、いのから思いがけない訃報が伝えられた。
何と、レプリカが死んだという。

カカシはすぐに真っ青になった。
火影のトマト顔が、いや、顔を赤くして怒る姿が目に浮かぶ。
だが、慌てている暇はなかった。
カカシの傍らにいたサクラが、突然倒れたのだ。

「サクラ!」
誰のものとも分からない叫びが辺りに響く。
抱き上げて頬を叩いても、反応はない。
極度のショックで意識が飛んだだけで、おそらく病というわけではないだろう。

「・・・知らねーぞ」
サスケの呟きが耳に届き、カカシは胸が痛くなる。
こんなことならきちんと護衛任務に行くのだったと、深く後悔した。

 

 

 

「サークラ。いい加減こっち向いてよ」
「・・・・」
任務終了後、後ろを付いてくるカカシを、サクラはまるっきり無視して歩く。

真相が分かって以来、サクラは三日間この調子だった。
任務は平常通りこなすが、カカシと目を合わせようとしない。
こうなったら、カカシは平謝りするしかなかった。
なにせ、サクラは倒れるほどカカシを心配していたのだから。

ナルトやサスケと別れた今、カカシを躊躇させる要素はない。
「騙して悪かったって。何でもするから、許してよ。ねぇ」
カカシが破れかぶれに謝罪の言葉を並べると、サクラがくるりと振り向いた。
そのまま、カカシの眼をじっと見詰めてくる。

 

「いなくならないで」

カカシの何か言葉を発する前に、サクラは口を開く。
カカシは一瞬、何を言われたのか分からなかった。
「・・・え?」
「何でもしてくれるんでしょ。もう、急にいなくなったりしないでよ」
たじろぐカカシを、サクラは食い入るように見詰めてくる。
気迫みなぎるサクラに、カカシは圧倒された。

「分かった!!?」
「はい」
空気に呑まれたのか、カカシは思わず肯定の返事をする。

頷いたサクラの笑顔はいつになく儚げに見えて、直後に瞳からこぼれた涙はカカシを動揺させるに十分だった。


あとがき??
美崎さんから頂いたメールで、『レプリカ』のカカシ視点が見たい、とありまして、思い浮かんだ話。
タイトルはそのまんま、レプリカの逆さ読み。


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