お願い神さま


「キャアアアァァァーーーー!!!」

サクラの悲鳴に、サスケとナルトは何事かと振り返る。
すると、サクラに回し蹴りをくらうカカシが目に入った。
もちろん、カカシは平然とした顔でそれを受け止めている。
「どうした?」
「カカシ先生が私のお尻触ったのよ!」
サスケが訊ねると、サクラは怒りに顔を真っ赤にして訴えた。
サスケもナルトもにわかに表情が険しくなる。

「ちょっと触っただけじゃないか。挨拶だよ、挨拶」
自分を睨み付けてくる下忍達に、カカシは言い訳じみたことを言う。
「それとサクラ、先生はサクラの服はもっと裾が短い方がいいと思うな。それでノースリーブ」
「何で私が先生の好みで服を選ばなきゃならないのよ!」
「セクハラだってばよ」
「・・・最低だな」
好き勝手な言葉が行き交う中、サスケは腰に手を当て、もう片方の手でカカシを指差す。

「大体、毎日遅刻するだけじゃ飽きたらず、通常任務のやる気のなさ。更に、女子にセクハラまがいの行為をするなんてことは」
「サクラ、あんみつ食べて帰ろうよvおごるからさ」
サクラの手を握りながら言うカカシに、サスケの額の血管は大きく波打つ。
「人の話を聞け!!!」

 

 

「疲れる・・・・」
結局、いつものようにカカシに言いくるめられて甘味屋に行ったサクラは重い足取りで帰路を歩く。
そして、通りがかりに目に入った、神社の鳥居。
サクラはふらりと境内に足を進める。

「どうかカカシ先生が真面目で尊敬できる立派な先生になりますように」

困ったときの神頼み。
柏手を打つと、サクラは切実な願いごとを一つした。

 

 

 

翌朝。
信じられない場目を目撃し、サクラは目を口を大きく開けた。

カカシがいる。
7班の集合場所に、決められた時間よりも早くに。
「おはよう」
ぽかんとした顔で突っ立っているサクラに、カカシが声をかける。
サクラが振り返ると、同じように呆然とした顔のサスケとナルトが揃って佇んでいた。

 

それから、カカシは人が変わったように真面目になった。

無駄口をたたくことなく任務をきびきびとこなし、定刻通りに解散する。
カカシが遅刻をせずに手際よく立ち回るものだから、任務の終了時間が通常よりかなり早くなった。
だが、生徒達に対する態度は、どこかそっけない。

「先生、帰りにラーメン食べて帰ろうよ。みんなでさ」
「・・・イルカ先生に連れて行ってもらえ」
カカシはナルトの誘いをあっさりと断る。
いつもなら、報告書の提出を後回しにしても生徒達に付き合ってくれていた。
「・・・つまんないの」
踵を返したカカシを見詰めて、ナルトはしょんぼりと地面を蹴っている。
ナルトを横目に、サクラも同じ気持ちだった。

 

「カカシ先生」
任務終了と同時に早々と立ち去ろうとしたカカシに、サクラは走り寄った。
「何?」
カカシは真顔で訊ねる。
見上げた瞬間に、このところカカシの笑顔を見ていないことに、サクラは改めて気付く。
「あの、カカシ先生最近様子が変だから、何かあったのかと思って・・・」
「そう?」
表情を変えることなく答えるカカシに、サクラは泣きたいような気持ちになる。
「急いでるから」
一言残し、カカシは振り返ることなく行ってしまった。

暫く無言で立ちつくしてたサクラはその足で、神社に向かう。
思えば、サクラがあの願いごとをしてからだ。
カカシが別人のようになってしまったのは。

たとえ欠点があっても、以前のカカシの方がずっと付き合いやすい。

 

 

 

「お待たせーーーー」
3時間遅刻して現れたカカシを、下忍達は不機嫌な顔で見詰める。

「最近遅れなかったのに、どうしたのさ」
「ああー、あれね。実は虫歯が出来ちゃってさ」
「虫歯?」
聞き返すナルトに、カカシは頷いて言葉を続ける。
「痛くて夜眠れなくて早めに集合場所に来てたんだよ。おまけに行きつけの歯医者のやってる時間が15時まででさ。早く任務を終わらせないと予約時間に間に合わなかったんだ。一週間通ってようやく治ったよ」
カカシは朗らかに笑ってナルトの頭を撫でた。

今まで笑顔がなく、口数が少なかったのは、歯が痛かったから。
それがカカシの豹変の正体。
分かってみると単純なことで、下忍達は皆呆気にとられた。

 

「あ、サクラv俺が言ったとおりノースリーブにしたんだね。嬉しいなぁ」
「うきゃあぁぁ!!」
ひしと抱きつかれ、サクラは絶叫する。
「離れろ!このアホ上忍!!」
サスケが傍らでがなり立てる。
ナルトは羨ましそうに指をくわえてカカシを見ている。

7班のいつも通りの光景だった。


あとがき??
「カカシ先生が珍しくまじめな話」がリクエストだったんです。
しかし、これがくせ者で、私、サクラ好き好きーvなお馬鹿カカシしか普段書いていないので、想像できなかったんですよ。
真面目カカシが。
それで、こんなオチに。
ラブラブにならなくて、すみませんでした。(>_<)
い、一応サクラちゃんカカシ先生の言うとおりの服にしてるんですけど。

42424HIT、愛華さま、有難うございました。


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