小鳥 2


『宝石の代わりに、愛らしい桜色の小鳥を頂きに参上します』

 

「随分とキザな予告状ですね・・・」

呼び出された応接室で、イルカは犯人からの予告状を見ながら声を出す。
“桜色の小鳥”というのが、サクラ嬢を指しているのだという意見にはイルカも賛同した。
予告状の最後には名前の変わりに案山子のマークが入っている。
十中八九、予告をしてから物を盗み出すという怪盗、通称カカシの仕業だ。
イルカは以前にカカシの予告状を見たことがあったが、これとほぼ同じ様式で書かれていた。

だが、イルカには分からないことが一つあった。

「カカシは本来宝石専門の盗人です。何故、今回のターゲットは“宝石の代わりに令嬢”なのでしょう」
「そんなことは、私の方が聞きたい」
イルカの質問に、当主は憤然たる面持ちで答える。
「失礼ですが、お宅は以前にもカカシに侵入されてますね」
「・・・ああ」
「そのときは価値のある宝石を数点盗まれたと」
「そうだ」
当主の返答に、イルカは「うーん」と唸り声をあげる。

当主は若い探偵を不安げに見遣る。
犯行予告の日付は明日と迫っていた。

 

 

 

「サクヤちゃん、これはここでいい?」
「うん」
サクヤの指示に従い、ナルトは花壇に球根を植えていく。
庭にいるサクヤを見つけてナルトが声をかけたのだが、ナルトはすっかり彼女に使われている。
だが、サクヤとのお喋りは楽しく、全然苦にはならなかった。
「本当に有難うござました。助かりました」
顔に泥を付けながらせっせと作業をするナルトに、サクヤは丁寧に感謝の言葉を述べる。

「サクヤちゃんは、花が好きなの」
「え、何で?」
「この庭の花、全部名前知ってるみたいだから」
にっこりと笑うナルトに、サクヤは笑顔を返す。
「ええ。ここにある花は全部私が植えたの。西の庭のことは全部分かるわ」
「へぇ」
ナルトは屈んでいた体を起こすと、庭園を見回す。
春夏秋冬、季節に合わせて何かしらの花が咲くように配置されている庭は、訪れる者も少なく、どこか寂しげだ。
これが公立の庭園なら、ざぞ賑やかで楽しい雰囲気になることだろう。

「それが終わったら休憩しましょ。私の部屋に来ない?」
「ええ!?部屋?」
サクヤの提案に、ナルトは大袈裟に驚く。
「・・・そんな、知り合って間もないのに。ちょっと早すぎるんじゃあ」
完全に一人の世界に入ってしまったナルトには、「お茶とお菓子でも」というサクヤの声はまるで聞こえていなかった。

 

 

サクヤの部屋は西の庭園がよく見える場所にあった。
一応個室だが、中の家具はベッドと机、そして小さなドレッサーのみという質素なもの。
急ごしらえで誂えたナルト達の部屋と何故かよく似ている。

「おじゃしまーす」
ナルトは扉を開けたサクヤのうしろからおずおずと部屋に入る。
初めてはいる同年代の女の子の部屋に緊張していたナルトは、窓際に置かれた鳥篭に目を留めた。
「あれ、何ていう鳥?」
サクヤは小首を傾げて鳥篭を見遣る。
「さあ?庭で見つけたの。怪我の治療中なのよ」
「本当だ」
小鳥の羽には包帯が巻かれている。
茶の用意をしたサクヤは、小鳥を眺めているナルトに椅子に座るよう促した。

 

「ナルトくんは、イルカさんの助手なのよね」
ティーカップを片手に、サクヤは傍らのナルトを見る。
「うん」
「話、聞かせてくれる?どんなところに行って、どんな事件を解決したのか」
「おやすいごようだよ」

それから、ナルトはイルカ探偵が解決した難事件、そして自分がそれにいかに貢献したのかを語って聞かせた。
汽車の中で強盗団とやりあった話や、気球に乗って犯人を追尾した話。
少しばかり脚色していたが、おおよそは事実だ。
サクヤも目を輝かせて冒険談に聞き入っている。
ナルトにとって、どんな話にも「凄い、凄い」と反応してくれるサクヤはいい聞き手だった。

サクヤは本当に羨ましそうにナルトを見詰める。
「ナルトくんはいろんなことを経験できて、いいわね」
「サクヤちゃんも、外に出ればいいじゃないか」
ナルトの物言いに、サクヤは黙って首を振る。
「私は駄目なの。ずっとここにいなきゃならないのよ」

サクヤの悲しげな呟きに、ナルトは首を傾げた。
何か、訊ねることをはばかれるような空気に、気まずい感じになる。

 

 

「怪盗さんは、掴まったら刑務所に入れられるの?」
静かな部屋に、サクヤの声が頼りなく響く。
「もちろんだよ。イルカ先生が絶対に掴まえてくれるから、心配しなくて大丈夫だよ!」
勇んで言うナルトに、サクヤは薄く微笑んだ。
その笑顔があまりに寂しそうで、ナルトはもしかしてサクヤはカカシの知り合いなのかと、妙な勘ぐりをしてしまった。


あとがき??
誰・・・・、1で終わると思っていた人は。
長!!無意味に長い。(涙)
でも、3で終わりですよ。カ、カカサクは−−・・・・・。(悩)

私の悪い癖が出てますので、早く終わらせないと。
行き当たりばったり主義の真骨頂。
最初に想像したのと全く違うラストになると思われます。あああー。


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