キスの代価


「何が欲しい、サクラ」

私の額にキスをしたカカシ先生が、お決まりの台詞を言う。

「べっこう飴」

私も、お決まりの返答をする。

 

キスの代価。
プレゼントは、あとに形が残らないものがいい。
目に触れるたびに、忘れられなくなるから。

カカシ先生は、ただの先生だから。

 

 

「何が欲しい、サクラ」
「オレンジジュース」

「何が欲しい、サクラ」
「苺の形の消しゴム」

「何が欲しい、サクラ」
「ラベンダーの香りの石鹸」

 

毎日繰り返される会話。
カカシ先生が、何を望んでいるのか分からない。
いつもニコニコの、感情の読めない顔に自分からキスをしてやった。

 

 

「何が欲しい、カカシ先生」

初めての、私からの問い掛け。
少し考える仕草をしたカカシ先生は、子供のように屈託なく笑う。

「愛情」

 

カカシ先生が望んだのは、私と同じ、形の残らないもの。
でも、心に残るもの。

「・・・それでいいの」
「それがいいの」

 

 

私達のキスは恋人同士のキスに代わった。
ただの先生から、私の恋人になったカカシ先生。

キスの代価は必要なくなった。


あとがき??
「好き」とか「愛してる」の言葉を使わずにサクラをGETするカカシ先生の話を書きたいと思いまして。

残らないプレゼント、というのは映画『東京マリーゴールド』から。
主人公が彼氏から貰った最初のプレゼントがべっこう飴。
物が残らないよう。彼には他に恋人がいるから。
でも、彼女はそれをずっと大事に持っていたのです。


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