カカシ先生のお見合い 1


相手の女性はお多福のお面をつけたような大胆不敵な面構えだった。
体格もどっしりしていて、身に付ける着物の帯を差し引いてもカカシの倍はあるのではと思える胴回りだ。
笑うと、大ぶりな歯が口からこぼれるように見える。
地声が大きいらしく、彼女が一言発すると10メートル先からも声がはっきりと聞き取れた。

「こちらの麗子さんは華道の家元のお嬢さんで、趣味はピアノにバレエと幅広く・・・」
麗子嬢の隣りに座る彼女の伯母がしきりに美辞麗句を並べる。
関取級の体重の彼女がバレエをすると言われても、あまりピンとこない。
「そうですか。素晴らしいですね」
麗子嬢の向かいの席に座るカカシは、愛想笑いと共に相槌を打つ。
カカシは珍しくスーツを着込み、髪もしっかりと七三分けにしている。
普段の彼を知る者ならたまらず吹きだすような滑稽な姿だ。
だが、カカシの方はこれ以上ないほど真面目な顔つきだった。
何しろ、カカシの生まれて初めての見合いの席なのだから。

 

里の長である火影に頭を下げられ、渋々承知した見合い。
場所はとある高級ホテルのレストランの一角だ。
天候に恵まれ、庭を眺める大きめな窓からは木漏れ日の優しい光が入り込んでいる。
立ち並ぶ木々の緑が眼に鮮やかで、それだけで癒される感じがした。

もとより、カカシはこの話に乗り気ではない。
ずっとどうやって断わるかを考えていたのだが、当日の今になってもその答えは見つからなかった。
何しろ降って沸いたような話で、何故自分に見合い話がきたのかもはっきりと分からない。
カカシがちらりと麗子嬢に目を向けると、彼女はにたりと笑った。
いや、麗子嬢はにっこりと微笑んだつもりだろうが、見るぶんにはにたりと言った方が正しい。
麗子嬢が今回の縁談に好感触な様子なのも、カカシが断わることをためらう理由の一つだ。

 

食事の時間が終わり暫らく経つと、定番の「あとは若いお二人にお任せして」と二人きりで会話をする時間が作られる。
カカシは「・・・置いていかないでくれ」と言いたいのを必死で堪えてその場に留まった。

 

 

「カカシさんは上忍の先生なんですよね」
「ええ。今年からは下忍達に教える立場になりました」
「素敵ですわv」
語尾にハートマークを付けて自分を見詰める麗子嬢に、カカシは困ったように頭をかく。
と、カカシのその動きが唐突に止まった。

レストランには、当然一般の客も出入りしている。
だが、値段が張ることもあって目に付くのは金持ちそうな人間ばかりだ。
その中でカカシの視界に入った、見慣れた二人組み。
フォーマルな服を着たアスマと紅が、眼を皿のようにしてカカシのいるテーブルを凝視している。
カカシは頭に手をやった状態のまま、冷水を浴びせられたように真っ青になった。
額からは不自然にダラダラと汗を流している。

「あら、顔色が悪いですわ。具合でも・・・・」
「い、いえ。大丈夫です」
明らかに動揺した声を出しながら、カカシはアスマ達のいた方角へと目線を戻す。
そこに、もう彼らの姿はなかった。
見間違いであって欲しい。
カカシは心からそう願った。

 

 

 

「カカシ先生、日曜日にお見合いしたんだってねーーー!!!!!」
顔を合わせるなり大声を出したナルトに、カカシは思わず掌でその口を塞いでいた。
「・・・・誰から聞いた」
カカシの問い掛けにナルトはふがふがと声をもらす。
口を押さえられた状態では、当然声を出すことは出来ない。

「アスマ先生。里中の忍びに言いふらしてたよ。カカシ先生がもの凄い美人と見合いしてたって」
カカシが手を離すと、ナルトはすぐに白状する。
「俺も聞いた」
「ああーーーー!!!」
傍らにいたサスケが同調して言うと、カカシは頭を抱えて絶叫した。
今日は珍しく時間どおりに集合したというのに、これでは任務に集中出来そうにない。

 

「カカシ先生ーーーー!!!!」
やがて、遅れてやって来たサクラが大きく手を振りながら駆けてきた。
その手には、彼女の手に余るほどの花束を抱えている。
カカシの元へたどり着くと、彼女は胸に片手を当て乱れた呼吸を整える。

「花買ってたら遅れちゃって。ごめんなさい」
「・・・何、これ」
カカシはサクラの手の内にある花束を指差して訊ねる。
サクラは満面の笑みを浮かべると、カカシに向かってその花を「はい」と手渡す。
「カカシ先生、結婚おめでとう!!!」

 

カカシは花束を手に、脱力してその場にへたり込んだ。
「・・・・誰から聞いた?」
「紅先生」
サクラはきょとんとした顔でうなだれるカカシを見詰めた。


あとがき??
つ、続きます。すみません。
猛烈に楽しかったです!!!はい。
1はギャグみたいですね。
さりげなくアス紅もvv趣味です。

麗子さんの名字は白鳥沢です。『ツルモク独身寮』。(笑)
大好きなキャラクター。しかし、うちの麗子嬢はエラと頬骨は出てません。


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