秋の夜長
長い長い待ち時間。
今日のカカシは、現時点ですでに3時間遅れてる。
そして、依然として彼が姿を見せる気配はない。
カカシの遅刻にすでに慣れっこになっている下忍達は、紅葉した木の下に固まり座り込んでいた。ナルトがふと横に目をやると、サクラがうとうとと舟を漕いでいる。
「サクラちゃん、こんなところで寝ると風邪ひくよ」
ナルトが呼びかけても、サクラはまるで反応がない。
先ほどから眠そうだったこともあり、昨夜寝るのが遅かったのかもしれないとナルトは思う。
「サクラちゃん」
ナルトはサクラの肩に手をかけてもう一度呼びかける。
軽く身じろぎをしたサクラは、苦しげにうめいた。「・・・・カカシ先生、私、もう駄目。寝させて」
硬直したナルトの手を払いのけると、サクラは顔を背けた。
そして、サクラは再びすうすうと寝息をたて始める。
「・・・」
「・・・」
ナルトとサスケは無言のまま、今の寝言の意味を考えていた。
「別に、ただ寝ぼけてただけだろ」
「でも、何でサクラちゃんの睡眠時間とカカシ先生が関係あるわけさ!!」
ナルトはいきり立った様子でダンッとテーブルを叩く。
「おいおい。俺に怒るなよ」
イルカはナルトをたしなめるように言った。
場所が一楽なだけに、他の客にも迷惑だ。
任務終了後にイルカに相談したナルトだが、どうも気持ちがすっきりとしない。「・・・もしやあの二人。でも、そんな素振りは」
「考えすぎだって」
悶々とするナルトの頭を、イルカが優しく撫でる。
「いらっしゃいー」
新たな客が来たらしく、背後に新しい風が当たった。
何となく振り向いたナルトは、一楽の暖簾の隙間からピンク色のサクラの髪を見た。
そして、その隣りにいる人物も。
「カカシ先生!!!」
「え?」
イルカもナルトのその声に振り返る。
邪魔な暖簾をどけて垣間見ると、確かにカカシとサクラが並んで歩いていた。
「サクラちゃん、今日は用事があるから一楽に行けないって言ってたけど、それって・・・・」
カカシ先生と会うからだったのか、という言葉をナルトは呑み込む。
イルカは何となく気まずい感じでナルトを見る。「ナルト、冷静にな、冷静に・・・」
「俺、行ってくる!!!」
イルカの声など耳に入らず、ナルトはすっくと椅子から立つ。
「え、でもラーメン・・・」
「イルカ先生、食べておいて!!!」
言うなり、ナルトはそのまま駆け出していった。
残されたイルカは、食べかけのナルトと自分のラーメン丼を見て眉をひそめた。
「あいつが、ラーメンを残すなんて・・・・。雪降るぞ」
密かにカカシとサクラのあとを付けたナルトだったが、行き先は一楽のすぐ近くだった。
カカシの自宅がある建物。
二人は親しげな様子でその建物に入っていった。
全てを目撃したナルトは電信柱の陰で立ち尽くす。
すでに放心状態だ。二人がそれほど親密な関係だとは、全く気付かなかった。
これなら、サクラの寝言も納得できるというもの。
暫しの時間が経過したあと、ナルトはとぼとぼと来た道を戻っていった。
「イルカ先生――・・・・」
「ナルト!??」
ようやく二人分のラーメンを食べ終えたイルカは、その地響きのように低い声に目を見張る。
これ以上ないほど暗い表情をしたナルトが、這うようにしてイルカの傍らの席に座る。
「マスター・・・・。涙忘れるカクテル、ちょうだい・・・・・」
「はいよ。味噌ラーメン一丁!」
一楽の店主はナルトのテンションの低さに構わず素早く受け答える。「俺、もう駄目かも・・・」
テーブルにこてんと頭を付けたナルトに、イルカはただおろおろとするばかりだった。
その夜、カカシの自宅。
「・・・カカシ先生、私、もう駄目。寝る」
「何言ってるんだ!!今日のノルマはまだまだ残ってるんだぞ!」
「ううっ」
『必勝』、『神風』と書かれた鉢巻をしたカカシとサクラは熱心な様子で机に向かっている。
分厚い辞書を片手に鉛筆を持つ様は、受験生とその家庭教師だ。要因はカカシにあった。
カカシが最近はまっている異国の洋書。
カカシはその原書を翻訳することに夢中になっていた。
1〜7まで刊行予定で、カカシが先日入手したのはその4巻目。
木ノ葉隠れの里では現在3巻まで翻訳本が出ており、4巻も暫らく待てば発売されるだろう。
だが、それを待ちきれないカカシのような熱烈なファンがいるのだ。
連日、手伝わされているサクラはたまったものではない。「何で私が・・・」
「あとで何でも好きなもの買ってやるからな!さあ、あと30ページ」
カカシは何としてもサクラを寝かさない構えだ。
優等生のサクラは翻訳の手伝いに丁度よい。そうして二人はナルトの涙を知ることなく、秋の夜はふけていくのだった。
あとがき??
カカシ先生が読んでいるのは、ハリポタですかね。(笑)
原書で読んでいる人は凄いと思います。
オチは何でも良かったんですが。
二人で同人原稿描いてる方が良かったでしょうか?(^▽^;)カカシ先生とサクラの間に珍しくラブはないです。教師と生徒。
ただ、ナルトのガーン!って感じが書きたかった。ラブリーナルチョv