睡眠睡眠また睡眠


「じゃあ、おやすみなさい」
「え」
微笑んだサクラが扉を閉めるのと、彼女の肩を抱こうとしたカカシの手が空を切ったのはほぼ同時だった。

 

サクラがカカシの家で同居を始めた一日目。
当然二人の甘い夜をカカシは期待していたのだが、夜が更けるとサクラはすぐさま自分の部屋へと下がってしまった。
しかも、時刻はまだ21時だ。
宵っ張りのカカシならば、布団に入ったところで寝付くことは出来ないだろう。
サクラの部屋には、用心深いことに鍵がかけられている。
だが、上忍のカカシがその気になればサクラが取り付けたちゃちな鍵を開けるなど造作もない。

「サクラだって、分かっててうちに来たはずだよな・・・」
カカシは言い訳じみたことを呟きながら、扉に手を掛ける。

 

カカシがピッキングに要した時間はほんの数分。
サクラが本格的に寝入る前に口説き落とそうとしたカカシだが、時はすでに遅かった。
お気に入りのぬいぐるみを片手にベッドに横になったサクラは、カカシの侵入に気付かないほど熟睡している。

「サクラ」
呼び掛けてみても、うんともすんとも言わない。
カカシは額に手を当てて深々と嘆息する。
曲がりなりにも同居をしようという健康な男女が、このようなことでいいのか。
絶対に間違っている。
サクラの無邪気さ、いや、無頓着さが恨めしい。

 

「そのうち気付くよな」
掛け布団を剥いだカカシは、クマのぬいぐるみを放り出してサクラのパジャマのボタンを外し始める。
これで目覚めるだろうと思ったカカシだが、サクラはまるで反応しなかった。
もしかして起きていて黙っているのではと勘ぐったカカシだが、サクラは穏やかな表情で寝息を立てている。
この睡眠力の強さはすでに驚異だ。
今のサクラならば地震や火事が起きても気付くことなく昇天できそうな気がする。

「・・・どうしよう」
取り敢えず上着を脱がせたもののサクラが起きる気配は全くなく、カカシは途方に暮れた。
いくらなんでも意識のない者をどうにかするのは、抵抗を感じる。
可愛いサクラの下着姿を前に、枕辺に座ったカカシは腕組みをして考え込んだ。

 

思案にふけるカカシがふと視線を下げると、いつの間にかサクラの目が開いていた。
うつろな眼差しながら、サクラはカカシをしっかりと見詰めている。

「サクラ」
歓喜の表情でその顔を覗き込んだカカシに、サクラは手を伸ばした。
「・・・カカシ先生」
名を呼びながら、サクラはカカシにギュウッと抱きつく。
「大好き」

かろうじてサクラの意識があったのは、そこまでだった。
目が覚めたと思ったのはカカシの勘違いで、寝ぼけていただけらしい。
その後カカシにくっついたサクラはどうやっても離れず、カカシは半裸のサクラを胸に抱いたまま一晩過ごすという、とんでもない苦行をしいられることとなった。

 

 

 

「ックシュン!」

翌朝、サクラはクシャミを合図に起床した。
寝ぼけ眼で半身を起こすと、何故かパジャマの上を着ていない。
首を傾げたサクラが身震いして傍らを見ると、顔色の冴えないカカシが同じベッドで横になっている。
「あれ、カカシ先生。何でいるの?」
「・・・・何でだろうねぇ」
やつれた顔のカカシは自嘲気味に笑う。

「サクラ。今日は6時間昼寝をすること」
「はぁ??」
ベッドから出たカカシに断定的に言われ、サクラは素っ頓狂な声をあげる。
「でも、今日は任務ないし、いの達と買い物に行こうかと・・・」
「これは、命令!!!分かった?」
いつになく厳しい口調のカカシに、サクラは驚いた表情のまま頷いた。


あとがき??
サブタイトルは「カカシ先生の眠れない夜」だろうか。(笑)
久々のカカサクリハビリ作品がこれか・・・・。
「夜まで待てない」の番外編が元ネタなんだけれども、「ハレグゥ」のクライヴ&ウェダ夫妻も入っていたらしい。

カカシ先生とサクラは恋人同士なんですよ。
書かないと分からないような気がしますが。
何とかサクラの元へとたどり着こうとピッキングを試みる上忍の姿を想像するだけで涙を誘います。
私なら意識がなかろうと、朝になろうと諦めないがな。(鬼か)


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