姫君 二


「どうも、すみません」
深々と頭を下げるサクラの母親に、カカシは困り顔だ。
「いえ、気になさらないでください」
それから二言三言、言葉を交わすと、カカシは早々にサクラの家から退散した。
カカシの後ろ姿を見送り、サクラの母親は2階への階段を上り始める。

 

「サクラ。先生、帰っちゃったわよ」
「・・・・」
母親の呼びかけにも、サクラは黙り込んだままだ。
3月28日の夜、パーティー帰りだと思われるカカシがサクラの家を立ち寄ったが、サクラは自分の部屋から出ていかなかった。
俯いているサクラに、母親は何かの包みを差し出す。
「誕生日プレゼントだって」

カカシはサクラの誕生日を忘れていたわけではなかった。
それが分かったところでカカシがサクラよりも雪姫を優先させたことは明白で、サクラはよけいに気を滅入らせる。

「それとね、里を離れるから暫く会えなくなるって言ってたわよ」
「え!!」
頬に手を添えた母親の言葉に、サクラははじかれたように顔をあげる。
「何それ!聞いてないわよ」
「そんなこと言われても、知らないわよ・・・」

慌てて窓に駆け寄ったサクラは必死に目を凝らしたが、カカシの姿はどこにもない。
暗い夜道は野良犬が一匹歩いているだけだ。
「だから、意地を張らないで会えば良かったのに・・・」
背後から聞こえる声に、サクラは痛いほど唇を噛みしめていた。

 

 

 

「毎日毎日こうやってて、あきないのか」
「・・・・」
半ば呆れているサスケの問い掛けにも、サクラは無言のまま下方を見詰めている。
その屋上からは、木ノ葉隠れの里と外国との唯一の通り道である門がよく見えた。
サクラは日がな一日、その場所で通行人を眺めていた。
任務のある日も、終了次第、この場所へやってくる。
カカシが帰ってきたら、すぐに分かるように。

サスケが何を言っても、サクラは「うん」や「ええ」といったおざなりな返事しかしなかった。
笑顔の無くなったサクラを、周りの人間も見ているのが辛い。

「あれはただの噂だ。気にすることはない」
「・・・でも、私、言っちゃったんだもの」
ようやくまともな反応があったかと思うと、サクラは目に涙を一杯にためていた。
嗚咽を漏らすサクラは、途切れ途切れに声を出す。
「先生の顔、もう見たくないって。・・・・あんなこと、言わなきゃ良かった」

 

カカシが里を離れたのは、自国へと帰る雪姫の護衛のためだ。
カカシが雪姫のお気に入りなのは周知のことで、カカシはもう戻ってこないのではと密かに噂されていた。
城仕えになれば給料は確実に倍増する。
さらに争乱の頃と違い平和な今なら、命を脅かす危険も少ない。
普通の忍びなら誰でも憧れる。

 

「おまえが夜遅くまでここにいると母親が心配する。それに春とはいえ、夕方からは冷え込むから・・・」
何とかサクラを説得しようとするサスケだったが、全てを言い終えないうちに、前方にいるサクラの体は大きく傾いだ。
「サクラ!」
そのまま倒れ込んだサクラにサスケは大きく声をあげる。
駆け寄ったサスケがとっさに額に手を遣ると、信じられない程の高熱だった。


あとがき??
つ、辛いってばよ・・・・。何かが間違っています。
四までいくかも。


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