必要条件


「あれ、サクラちゃんはー?」
カカシの家に上がりこむなり、ナルトは周りを見回しながら訊ねる。
いつもなら、サクラが玄関口まで出てくるのだが、今日はカカシしかいない。
「ああ、任務で里の外に出てるんだ」
「ふーん。じゃあ、帰ろうかなぁ」
分かりやすいナルトの言動に、カカシは苦笑をもらしながらリビングを指差す。
「ま、茶でも入れるから飲んでいけよ」

 

カカシとサクラが同居を始めて半年ほど経つが、ナルトは頻繁にやってくる。
二人の邪魔をしに来るというより、本当に遊びに来ているという感じだ。
この日も、ナルトは持参したケーキを自分で皿を用意して食べている。

 

「サクラちゃん、今日から二週間も里にいないんだ」
「そう」
「先生は、もう付いていかなくていいの?」
「・・・うん」
茶を一口啜ったカカシは、前回サクラの任務にこっそりと付いていって大目玉を食らったことを思い出す。
ただサクラの普段の仕事振りを見てみたいという好奇心だったのだが、サクラはカカシが自分の力量を信用していないと思ったらしい。
サクラは、サクラなりに忍びとしての誇りを持っているのだ。

「じゃあ、辛いかもね」
「大丈夫だよ。時間はかかるけど危険な任務じゃないし、サクラはそれほど弱くない」
「俺はカカシ先生のことを言ったんだよ」
意外な一言に、カカシはナルトへと視線を向ける。
ナルトはケーキの最後の一片を突付くと、それを口へと運びながら言った。

「カカシ先生って、本当に不器用な人だね」

 

 

 

その夜、ベッドの中でカカシは何度も寝返りを打った。
時刻は深夜の二時だ。
目覚ましをセットして横になったのは、三時間も前のことだというのに、なかなか寝付くことが出来ない。
ただ過ぎていく時間に、カカシは舌打ちをした。

サクラのいない夜。
おそらく、サクラはカカシと同じ状況にはなっていない。
大人であるカカシが、年下のサクラを支えているように、周りの者は見ていた。
また、カカシもそのつもりでいた。
それならば、この現状はどういったことだろう。

何もかも見抜いたようなナルトの目を思い出し、カカシは舌打ちを繰り返した。

 

 

 

「ただいまー」
二週間の遠征から戻ったサクラは、満面の笑みでカカシに飛びついた。
「あ、ごめん。私、服汚れて凄いことになってるのよ。まずお風呂に入るから」
すぐさま離れようとしたサクラだが、密着した体はそのままだ。
それもそのはず、カカシがサクラの背中をしっかりと押さえている。

「ちょっと、先生。私、凄い汗臭いんだってば!」
「いいよ。サクラの匂いだもん」
カカシはサクラを抱く手の力を強めながら言う。
確かに、サクラは汚れた身なりをしていたが、気にならない。
サクラの全てがいとおしく思える。

サクラの温もりに安堵した次の瞬間に、カカシはその場で倒れこんでいた。
「せ、先生――!!!」
慌てて屈んだサクラはカカシを抱き起こしたが、カカシは返事をしない。
サクラがその顔を覗き込むと、すうすうと寝息を立てている。
どこか体の調子が悪いのかと心配したサクラだったが、ただ熟睡しているだけのようだ。

 

「・・・何で、人の顔見るなり寝ちゃうのよ」
目を覚まさないカカシを抱えたまま、サクラはどうしたらいいか分からず途方に暮れる。
そして、答えはサクラの背後から聞こえてきた。
「それはね、カカシ先生は二週間ろくろく眠れなかったからだよ」
「ナルト?」
振り返ると、予想通り、ナルトが腕を組んで立っていた。
玄関の扉は閉まっていたはずだ。

「あんた、いつ来たのよ」
「今。サクラちゃんが戻ってきたって聞いて駆けつけたんだ」
ナルトはにっこりと笑って言葉を続ける。
「おかえりなさい」
「え、うん。ただいま」
戸惑うサクラをよそに、ナルトは「よいしょ」と声を出しながらカカシの体を抱え上げた。

 

「ねぇ、眠れなかったって、どうして?」
「寒かったからじゃないの」
カカシを寝室へと運びながら、ナルトは適当なことを言う。
サクラは首をかしげて眉を寄せた。

真実を言うつもりは、ナルトにはない。
十分にラブラブな二人なのだから、これくらいしても罰は当たらないはずだ。


あとがき??
大掃除中、風呂釜を洗いながら考えた話。急ごしらえなので、よく分からないですな。
ナルト、大好きです。
元ネタは猫山宮緒先生の『エデンへおいで』。
和泉さんと七海がですね、私、カカシ先生とサクラにしか見えないのですよ。
いや、あれは監督と女優という関係ですが。私の目指すカカサクはああいった感じ。
とにかく、和泉さん=カカシ先生なのです。性格ね。


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