迎春


「あけましておめでとうございます」
「おめでとうございます」
サクラに続き、ナルトも新年の挨拶と共に頭を下げる。
何となく思惑は読めたカカシだったが、予想通り、ナルトとサクラはカカシに向かって両手を突き出した。

「「お年玉、ちょうだいvv」」
「帰れ」
カカシが玄関の扉を閉めるよりも早く、ナルトがその隙間に足を挟む。
「おせち料理も持ってきたから、新年会しようよ」
「俺もいろいろ食い物持ってきたってばよ!」

ナルトとサクラは必死に食い下がる。
後方には、カカシに無言の圧力をかけるサスケも佇んでいた。

 

 

「楽しいなぁ」
「・・・俺は楽しくない」
「まぁまぁ」
ナルトは傍らにいるカカシの背中をぽんっと叩く。

カカシの自宅を強襲し、強引にお年玉をせしめた下忍3人はほくほく顔だ。
思わぬ出費にカカシの財布から一気に紙幣が消えてしまった。
「先生の分もおせち料理取り分けたからさ。はい」
この日ばかりはサクラもサービスよくカカシに皿を手渡す。

「これ、美味しいね」
「ナルト、あんたそれあんまり飲むとよっぱらうわよ」
「でも、飲みやすいよー」
サクラの心配をよそに、ナルトはお屠蘇を杯についで飲みまくっている。
「はい、サクラちゃんにも」

 

料理を食べ尽くし、TVに見入っていた7班の面々だが、番組はどれも似たようなものばかりで段々と飽きてくる。

「カカシ先生、TVゲームとか置いてないの?」
「そんなものない」
「トランプとかは」
「それもない」
何を言っても否定の返事しか返ってこず、ナルトは不機嫌そうに眉を寄せた。

「んじゃあ、サクラちゃん。俺とポッキーゲームしよう」
「・・・何それ」
「これをね、両端から食べていくの」
ナルトは受け皿に散らばる菓子の中からポッキーを一本手に取って説明する。
ナルトの言うとおりにすれば、最後にはキスに行き着くという罰ゲーム的な遊びだ。

「ナルト!」
「うわっ!!じょ、冗談だってば・・・」
険しい表情のサクラにナルトは思わず頭を押さえて目を瞑る。
だが、いつまで待ってもサクラの鉄拳はナルトの頭に落ちてこない。
代わりにナルトを襲ったのは、柔らかく、温かなものだった。

 

 

「サ、サクラ!!!」
狼狽したカカシの声に、凍っていた時間が動き出す。
ナルトの顔から手を離すと、サクラは腰に手を当てて偉そうに言った。
「キスして欲しいんだったら、素直に言いなさいよね」
くるりと顔を反転させたと思うと、サクラは今度はサスケと目線を合わせる。
「・・・次」

「ちょ、ちょっと待て!」
サスケは身を乗り出したサクラの肩を何とか掴まえた。
その顔を見ると、頬は赤く、目の焦点が定まってない。
「酔っ払ってる・・・・」
その呟きを耳にして、サクラは頬を緩ませた。
「やだ、そんなことないわよぉ」

へらへらと笑うサクラは、明らかに正常ではない。
サクラは酔うとキス魔になるということが、この時発覚した。
幸運なナルトは、自体を受け止めることが出来ず放心状態だ。

 

「くそー、羨ましい奴め!!」
握り拳を作ったカカシは歯噛みしてナルトを睨みつける。
「サクラ、俺にも!」
勢い込んで振り返ったカカシだが、そこにサクラの姿はなかった。

「あれ、サクラは?」
「出て行った」
冷静な顔で玄関を指差すサスケに、カカシは眉を吊り上げた。
「見てないで止めろ!!アホ」

 

 

新たなターゲットを物色しに表に出たサクラを、カカシはすんでのところで捕まえた。
酔いの覚めたサクラは、その間のことを全く覚えていない。
以降サクラはカカシによって禁酒令が出され、新年会でお屠蘇が登場することは二度となくなった。


あとがき??
はい。元ネタは「花とゆめ」で連載中の『女子妄想症候群』です。(笑)
本当はもっと長くてカカサクっぽくてエロかった(?)けど、自粛。
うち、正月は必ずお屠蘇を飲むのですが、今はそうでない家庭も多いらしいですね。

しかし、ナルチョ役得ですな。
サクラがカカシ先生を素通りしたのは、「先生とは、いつもしてるから」という理由からだったのですが、そんな裏話は作中に入らなかった。


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