ANGEL SMILE


「いいわよ」

にっこりと微笑んだサクラは、易々と承諾した。
旅行をしようと誘ったカカシが、心配になるほどに。
「本当にいいの」
「うん?次の休みに行くんでしょ。遅刻しないでよね」

サクラはカカシに向かって手を振ると、「また明日ね」の言葉を残して踵を返す。
サクラの後ろ姿を見詰めながら、カカシは漠然とした不安を抱えていた。
思えば、このとききちんと確認しておくのだった。
カカシは、サクラと二人きりで旅行をする予定だったのだから。

 

 

 

「おやつは500円まででしょー」
「それより、バナナがおやつに入るかどうかの方が問題だってばよ」
「これは買ったんじゃなくて、家にあったものを持ってきたから値段は関係ない」

大きなリュックサックを背負った下忍三人組は騒々しく言い合いをしている。
その後ろには、引率の教師さながら、カカシがげんなりとした顔で歩いていた。
向かう先は、温泉宿。
季節はずれの今の時期なら、どの宿でも予約無しで泊まれるはずだ。

「サクラ」
呼ばれたことに気付いたサクラは、すぐにカカシのもとへと駆けてくる。
「何?」
「何でナルトとサスケがいるんだ」
「私が電話で連絡したから」
サクラは邪気のない笑みでカカシを見上げる。
「みんなで一緒にお泊まりなんて、波の国以来ね」
「・・・・・」

嬉しそうに笑うサクラの前では、全く無力のカカシだった。

 

 

宿の料理に舌鼓を打ち、露天風呂から眺める景色は素晴らしく、宿泊する部屋も趣のある和室だった。
だが、料金をほぼ自分が払うのだと思うと、カカシは楽しさも半減だ。

 

カカシが自販機で飲み物を買って帰ると、部屋にはサクラしかいなかった。
「ナルトとサスケは?」
「また温泉に入りに行ったわよ」
カカシが放り投げたジュースの缶を受け取りながら、サクラはTVへと目線を戻す。
夕食を終え、次の間には4人分の布団が敷いてある。

「サクラ、先生と一緒の布団で寝ようか」
「うん」
冗談交じりのカカシの言葉にサクラは即答する。
ジュースのプルタグを開けると、サクラは笑顔のままカカシを仰ぎ見た。

「いいわよ」

 

 

 

「何か、カカシ先生、やつれてない?」
「日々の疲れを取るための湯治旅行じゃなかったのかしら」
「自業自得。よこしまな人間である証拠だ」
「?」
里へと戻る道すがら、下忍達は再び騒がしく言葉を交わしている。
その数歩後に続くカカシは、目の下にクマを作っていた。

昨夜、カカシはサクラと一緒の布団で寝るには寝たが、サクラは横になるなり爆睡してしまった。
洗ったばかりのサクラの髪は良い香りがして、体も柔らかく温かい。
だが、同じ部屋にはナルトとサスケがいるばかりか、安心しきった天使の寝顔を見て、何かちょっかいを出せるはずもない。
蛇の生殺し状態のカカシは、非常な苦痛を強いられることとなった。

 

「サクラ」
「はーい」
カカシが呼ぶと、サクラはすぐにやってくる。

「次の旅行は二人だけで行くぞ」
カカシの強い口調に、サクラはきょとんとした顔をする。
だが、すぐに朗らかな笑みを浮かべると、小さく頷いた。

「いいわよ」

 

愛らしいサクラの笑顔。
いつものように可愛いと思う反面、何故か恐ろしいと感じるカカシがいた。


あとがき??
小悪魔パワー全開のサクラ嬢でした。(笑)
たぶん二人で旅行って、どういう意味かよく分かっていないのでしょう。
うちのカカシ先生はよくこういう目に合います。
何気に、サスケが旅行に付いてきているあたりがポイント。
ちなみに、
NARUTO界の通貨は“円”ではなく“両”です。

リクエストは、7班で旅行。カカサク前提。
ら、ラブラブを期待されたんだとしたら、すみません!!!
それと、物凄く遅れてしまって申し訳ございませんでした!

60000HIT、えりか様、有難うございました。


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