恋の季節


クシャンクシャンクシャンッ

 

立て続けにクシャミをしたサクラは、口元に手をやったまま鼻水をすする。

「・・・またいやな季節がやってきたわ」
「サクラ、花粉症だっけ」
「先生は違うの?」
平然とした顔で隣りを歩くカカシを、サクラは恨めしげに見る。

「俺の覆面は火も水も花粉も通さない完全仕様なんだ」
「・・・・どういうマスクよ」
ぷいと顔をそむけたサクラは、少し早足で歩き始めた。

 

「いいことないわよ。季節の変わり目って、朝夕寒くて昼暑いから着る物困るし。花粉症のおかげで一日頭が重い感じだし・・・」
「でもさ、寒いよりあったかい方が外に出ようと思うだろ。外に出れば春の花が咲き始めてるし」
サクラに追いついたカカシは、彼女の顔を覗き込むようにして見る。
「それに、サクラの誕生日もあるしね」

「・・・知ってたの」
「うん」
当然、といった顔でカカシは微笑む。
カカシが今日サクラ呼び出したのは、プレゼントを渡すためだ。

 

 

「はい、これあげる」
「何、何!?」
カカシが差し出した封筒を、サクラは期待に満ちあふれた瞳で開封する。
この薄さからすると、コンサートのチケットか、何かの引換券か。

「“カカシ先生と一日デート券”!」

中から出てきた紙の文字をサクラが読む前に、カカシはにこにこと笑いながら言った。
手作りと思われるそれは、きちんとパウチ加工されている。
箔押ししてあることといい、無駄に豪華だ。

「制限はないから、何度でも使えるぞv」
「・・・・・いらない」
いらぬ期待をした分、サクラは冷たい口調で“一日デート券”を押し返す。
「そう言わないで。何でも買ってあげるぞ」
「・・・援助交際じゃないんだから」
「じゃあ、これはどう、これは」

 

今度の物が、正真正銘のプレゼント。
注文が殺到し、なかなか手に入らないと評判の“春の新色リップ”。
リボンのついたそれをサクラが受け取ると、カカシは彼女の頭に手を置いた。

「サクラ、欲しがってたから。でも、鼻水が止まってからつけた方がいいぞ」
「・・・・」
「これからいのちゃん達と誕生日パーティーやるんだろ。急に呼び出して、悪かったな」

 

踵を返したカカシだったが、足を踏み出す前に動きを止める。
振り返ると、サクラがカカシの服のすそを掴んでいた。
俯き加減で表情は分からないが、心なし耳が赤いように思える。

「何?」
「・・・・さっきのも、ちょうだい」
「さっきのって」
もごもごとこもったような声を出すサクラに、カカシは首を傾げる。
カカシが自分の作った“一日デート券”のことを思い出すのは、それから30秒ほど経過してからだった。


あとがき??
パウチで箔押しって・・・。(笑)
もちろん、先生は冗談のつもりで作ったんですよ。全然うけなかったですが。
“肩たたき券”と同じ要領で。
っていうか、デート券!私本気で欲しいですよ。
同じような話前にも書きましたが、急ごしらえなのでご勘弁を。


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