乙女の憂鬱


「太った・・・・」

クローゼットの前で跪いたサクラは、この世の終わりのような顔をして呟く。
その手には、着られなくなった衣服を握り締めていた。
近頃、ナルトに付き合ってラーメンを食べに行ったり、いのとあんみつを食べに行ったりと無理をしすぎたか。
暫くの間呆然と座り込んでいたサクラだが、ある決意を胸に、立ち上がる。
食べなければ、痩せる。
簡単な理論だ。

「お母さん、私、今日夕食いらないから!」
二階から階段を駆け下りてきたサクラは、母親に向かって厳しい口調で言った。

 

 

 

「モーソンの春限定「お花見御膳」。お前らの分も買ってきてやったぞー」
「先生、太っ腹――vv」
任務の合間の昼休み、重箱片手にやってきたカカシにナルトは飛び付いた。
そして、絶食中のサクラのサクラは恨めしげにその様子を眺めている。
こういうときにかぎって、カカシが下忍達によけいな気を遣ったりするのは、何の因果だろう。

「サクラー、いらないの?」
「・・・・」
一人、離れた場所に座るサクラに、カカシは明るい笑顔で訊ねる。
目の前で弁当をちらつかせるカカシは、サクラにとって目障り以外の何ものでもなかった。
「・・・いらない」
出来うるかぎり顔をカカシからそらして言うサクラだったが、カカシはかまうことなくサクラの隣りに座り込む。

 

「春限定だから、今しか食べられない食材ばかりだぞv美味そうだなぁ」
「・・・・」
「何だったら、先生が食べさせてあげるようか」
「・・・・」
「おい、こっち向けって」
しつこく話しかけてくるカカシに、空腹も手伝って、サクラは早々にぶち切れる。

「ダイエットしてるの気付いてるくせに、どうして嫌がらせするのよ!!!馬鹿!」
大音声と共に立ち上がったサクラは、そのままカカシを睨み付けた。
その目は今まで見たことがないほど怒りに満ちていたが、カカシは臆することなくサクラを見上げる。
「知ってたよ。だから、今日はサクラのために弁当買ってきたんだ」

先ほどとは全く調子の違う声音のカカシに、サクラは居竦んだ。
その眼差しから、彼の機嫌があまり良くないことがはっきりと分かる。
今まで感じたことのない威圧感に、相手が自分の担任と分かっていても、サクラは体が震えそうになる。

 

「サクラ、自分の体調管理も忍びの大事な仕事なんだよ。いざというときに空腹で倒れてたら、何の役にも立たない。元々サクラはナルト達に比べて体力がないんだから。もう少し忍びとしての自覚を持ったらどうだ」
いつになく厳しい口調で言われ、サクラの目尻に自然と涙が浮かんだ。
必死に目元をこするサクラに、カカシはやや乱暴にその頭を撫でた。

「大体、サクラは成長期なんだから、沢山食べないと大きくなれないぞ。全然、太ってないし」
「・・・でも」
「ん?」
「き、着れなくなった服があるの。胸回りとか、腰回りがきつくて・・・」
サクラが言い終えないうちに、カカシは片手を彼女の胸元に押し当てた。
突然のことに、サクラは悲鳴をあげることも忘れてカカシの顔を凝視する。

「あー、サクラ、安心しな。これは太ったんじゃなくて、グラマーになったっていうんだよ。胸は前より大分成長してるし」

 

 

何かが弾けたような音に、ナルトとサスケは同時に振り返る。

その方角からは、肩を怒らせながら歩いてくるサクラがいる。
後方に倒れているカカシがいることから、今のはカカシがサクラに平手打ちを食らった音だというのは容易に推測できた。

 

「何があったの?」
「痴漢よ、痴漢」
つっけんどんな声で答えると、サクラはナルトの隣りに腰を下ろした。
そして、カカシから奪ってきた「お花見御膳」を物凄いスピードで食べ始める。

「あれ、サクラちゃんダイエットやめたんだ」
「・・・成長期だもの」


あとがき??
元ネタは『きまぐれオレンジロード』。(誰が分かる・・・)
乳もみカカシを書きたかっただけだろうか??カカシ先生、簡単にやられすぎだってばよ。


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