メランコリィな横顔


場所は、夕飯の買出しのため、主婦達でにぎわう木ノ葉商店街。

 

「・・・・また、綺麗な女の人連れてる」

眉間に皺を寄せ、サクラは不機嫌な様子で呟く。
据わった目が見詰めているのは、女性の肩を抱いて歩くカカシだ。
三軒ほど先の店から出てきた二人だったが、彼らはサクラのいる方を全く気にしていない。
カカシは気付いていて無視しているのか、生徒の気配を察することが出来ないほど会話に夢中になっているか。
どちらにしても、サクラには面白くない状況だ。

「昨日、一緒にいた女の人と違うわ。全くどういう神経してるのかしら」

顔をそむけると、サクラはそのまま黙り込む。
まだ買い物の途中だというのに気まずい沈黙が続き、一緒に歩いているサスケは大いに困った。
任務終了後、明日の仕事に使う道具をカカシの命令で買いに来たのだが、当の本人がやに下がった顔で女と歩いていればつむじを曲げるのも当然かもしれない。
だが、サクラの言葉には、そういったものとはまた違うニュアンスが感じられた。

 

「昨日も、カカシを見たのか?」
「そうよ。一週間前くらい前にも見たけど、その時もまた別の綺麗なお姉さんを連れていたわ。でもカカシ先生が一緒にいる女の人って、共通点があるの。お化粧ばっちりで、スタイル抜群で、お色気たっぷり。私とまるっきり正反対のタイプ。人目があるのに、ベタベタしちゃって、いやらしいったらないわ。すっごく頭悪そう」

サクラの愚痴は延々と続き、話す間に、声のトーンはどんどん低くなっていく。
サスケは自分の切り出した話題が不適切だったと悟ったが、時すでに遅しだ。

言いたいことを全て吐き出すと、サクラは大きくため息をついた。

 

 

「私、早く大人になりたい」

空を仰ぐと、サクラは自分自身に発破をかけるような声で言う。
サスケが隣りにいることを、すっかり忘れているように。
今までの罵詈雑言はカモフラージュで、おそらく、これがサクラの本音。

「大人になって、先生の好みのタイプに変身するの。そうしたら、先生の周りにいる女の人達と張り合えるわ、きっと」

 

憂い顔の少女は、視点の曖昧な眼差しを前方へと向けた。
その先にあるのは、人でごった返す道。
想うのは、自分を振り返ることなく、美女と共に姿を消した担任のことだろうか。

サスケが初めて見る、別人のように大人びた顔のサクラ。
見ている方も胸が苦しくなる。
そんな表情だった。

 

 

 

「俺は、サクラはそのままでいいと思う」

顔を上げたサクラに、サスケはカカシ達が消えていった路地を指差す。
「無理に自分を変える必要はないし、話しにくいだろ。サクラが、あんな風になったら」

あんな風というのは、おそらくお化粧ばっちりで、スタイル抜群で、お色気たっぷりなサクラと正反対の女性のこと。
まじまじと見詰めてくるサクラにも、サスケは真面目な顔を崩さない。
珍しく、サスケが自分に気を遣っているのだと知ったサクラは、徐々に口元を綻ばせた。

「サスケくんがそう言うなら、いいかな」

 

本来の笑顔を取り戻したサクラに、サスケは少しだけ緊張して目線をそらす。
見慣れているはずの微笑が、いやに輝いて見える。
光線の加減だろうかと、本気で悩むサスケの心情をサクラは知る由もなかった。


あとがき??
イメージは、少年が恋をする瞬間。
身近な女の子のいつもと違った面を見て、ちょっとときめいちゃったり。
川原由美子先生の『
CLIME THE MOUNTAIN』を見て書きたくなった。
未明=サクラ、由貴=サスケ、美由貴パパ=カカシ。また書きたいかも。

うちのサイト、サスサク好きーさんがいらしていると知ったとたん、こんなの書いちゃったよ。
カカサク好きーな自分には大ダメージ。(笑)
「そのままの君が好きだよ」とは言えないサスケ。(絶対言わないって)
サクラのことを好きでないカカシ先生ってのは、新鮮だったり。

実は『後から悔やむこと』という大昔に書いた作品に続いている。サクラの相手はサスケですよ。
妙に時間がかかったわりに、短い話。


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