コケティッシュ


「お前さー、サクラのことどうするつもりなんだ」
「どうって?」
同僚の言葉に、カカシは首を傾げて聞き返す。
「随分と親しいって噂だぞ。これからずっとお付き合いをするのかどうかって話だ」

一瞬、ぽかんとした顔をすると、カカシは大きな笑い声を立てた。
「サクラはナルトやサスケと一緒だよ。子犬に懐かれてるみたいなもんだ」
「違うだろ」
大爆笑するカカシを横目に、同僚は真顔で言った。
「あれはくの一だ」

 

 

 

「先生」
任務報告を終えて建物から出てきたカカシに、子供が一人、飛び付いてきた。
突然の襲来にも、カカシは落ち着いた様子で薄紅色の髪を撫でる。
「何だ。また待ってたのか?」
「うん」
邪気の無い笑みを浮かべたサクラは、当然のようにカカシの腕に手を絡ませてくる。
このまま木ノ葉商店街を通って、カカシの自宅まで直行するのが、日課となっている毎日だ。

思えば、サクラは用もないのにカカシの家に頻繁にやってくる。
二人が家でしていることと言えば、
TVを見ているか、たわいない話をするか、ゲームに興じるか。
だけれど、そうした情景を見ていない者にしてみれば、誤解をしても仕方がない。

 

「なー、サクラ」
「ん?」
「もう止めないか、こんなこと」
談笑の合間に挟まれた言葉に、サクラはゆっくりと振り返る。

「・・・どういう意味」
「注意されちゃったんだよ。サクラとあんまり仲良くするなって」
「どうして?」
サクラは不思議そうにカカシを見る。
「えーと、ほら、俺達生徒と教師っていう間柄だし、その一人とだけ親しくするのはマズイみたいだよ」
「でも、ナルトとイルカ先生なんてしょっちゅう二人でくっついてるじゃない」

サクラの切り返しに、カカシは声を詰まらせる。
サクラが女の子だから、とは、純真な瞳を見ては言いにくい。
やましい気持ちなど少しもないのに、妙に意識してると思われるのも嫌だ。

「いいじゃない。私達は私達なんだから、人の言葉なんてどうでも」

サクラの一言で、結局、その話はお仕舞いになってしまった。

 

 

 

「・・・あれ」
キッチンに立つカカシは、食器棚の前で首を傾げた。
愛用のコップが、一つなくなっている。
だが、割った覚えも別の場所に移動した覚えもなかった。

「どうかしたー?」
「ここに置いたコップがなくなってるんだけど・・・」
「ああ」
頷いたサクラは、にっこりと微笑む。

「あれなら、私が捨てたわよ」
「す、捨てたーー!!?」
思いがけない言葉に、カカシは素っ頓狂な声をあげた。
だが、笑顔のサクラは全く動じない。

「うん。新しいの買っておいたから。これ、私とおそろいね」
カカシに新品のコップ二つを手渡すと、サクラはすたすたとキッチンから出て行く。
カカシはただ呆然とその後ろ姿を見送った。

 

「あ、あの、サクラ。最近他にもいろいろと物が無くなってるんだけど、もしかしたらそれも・・・」
「大丈夫よ。ハンドタオル、パジャマ、枕カバー、クッション、その他諸々。全部新しいの用意したから」
後ろを付いて歩いてくるカカシに、サクラはやはり笑顔で答える。
唖然とするカカシなどお構いなしだ。
使えればいい、という感覚の持ち主であるカカシはとくに怒るつもりはなかったが、サクラの行動の意味が全く分からなかった。

「別に、いいけどさ・・・」
サクラに渡された日用品の山を抱えながら、カカシは不可思議な表情のまま踵を返す。

 

「他の女からのプレゼントなんて、愛用するんじゃないわよ」

 

「え?」
「ううん。何でもない」
振り向いたカカシに、サクラは優しい笑みを浮かべて応える。
先ほど感じた殺気は、勘違いだったとすぐに思い直したカカシだった。


あとがき??
サクラ、怖いですねぇ。(笑)
無邪気な少女の仮面で、女の部分を見事に隠しています。
同僚の人も、あれは女だって忠告してくれたのに。
サクラにはこの調子でカカシ先生に近づく女を蹴散らしていって欲しいです。
カカシ先生、もてもてなので。
でも、カカシ先生はいつまで騙されてくれるかな?

思っていたのと全然違う話になったので、タイトルが浮いている・・・・。
こういう話も書きますよ。きっと。


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