カカシ先生のつむじ


いつものように、遊びに来たカカシの家で、サクラは強制労働を強いられていた。
とはいっても、腕力を使う仕事ではない。
主に疲労するのは正座をする足部分だ。

 

「先生。いい年して、耳掃除くらい自分でやってよ」
「だって、俺、今まで自分でしたことないんだもん」
「・・・・どこかの可愛いお姉さん達にやってもらっていたわけね」
「イテテテ!!」
腿の上にある耳を少々引っ張ると、カカシはすぐに悲鳴をあげる。

「何だよー。いつも美味しい料理たらふく食べてるんだから、これくらいしてくれてもいいだろ」
「分かってるわよ」
ぶつぶつと文句を言いながらも、サクラは再び耳かき棒を手に作業を開始する。
何故か腹立たしい気持ちだったが、理由は自分でもよく分からなかった。

 

「はい、両方とも終わったわよ。どいて、どいて」
耳かき棒を傍らに置いたサクラはカカシの頭をぽんと叩く。
そのまま暫く待ったが、カカシからの反応はない。
「カカシ先生?」
不審に思ったサクラが顔を覗き込むと、カカシはひどく穏やかな表情で寝息を立てていた。
サクラの足のしびれは限界に近い。
すぐさま立ち上がって体を伸ばしたかったのだが、気持ちの良さそうな寝顔を見たら、どうも気持ちがそがれてしまう。

「お子さまみたいねぇ・・・」
ため息をつくと、サクラはカカシの髪を優しく撫でる。
体を丸め、安心しきった顔で眠る姿は、頑是無い子供そのものだった。

 

 

 

「それでね、サクラに膝枕してもらって、幸せだったんだ。もう、ラブラブって感じだよね!」
「はいはい」
花の入る水桶を移動をさせるいのに、カカシはついて回る。
丁度、花屋の客足は途切れていたが、邪魔なことこの上なかった。

「カカシ先生、今日もサクラが家に行くんでしょ。用意しなくていいの」
「そうだった!」
カカシははっとして時計を見つめる。
「はい。これ」

いのは用意してあった花束をカカシに手渡した。
サクラの好きな、ピンクのガーベラ。
長い付き合いから、サクラの好みはいのが一番分かっている。
微笑んだカカシは、7班の下忍達にするのと同じ様に、いのの頭を撫でた。

「いのちゃん、いつも有難うね」

 

 

「サクラはさ、どういうときに幸せを感じる?」
「えー?」

カカシの家に行く途中、花屋に立ち寄ったサクラに、いのは真顔で訊ねた。
カカシはサクラと一緒にいてとても幸せだということが伝わってくる。
だけれど、サクラはカカシが好きなのか、カカシの料理が好きなのか、いまいち微妙だ。

「そんなこと、突然言われても、分からないわよ」
「何かをしてるときとか、何かを見たときとか。幸せを噛みしめる瞬間って、ないの?」
「んー、何かを見たときねぇ・・・・」
しつこく訊ねるいのに、サクラは腕組みをしながら考え始める。

「カカシ先生のつむじ、かな」


あとがき??
上忍のカカシ先生が誰かの前であれだけ無防備になるのは珍しい。
身長差のせいで、サクラがカカシ先生の脳天を見れるのは、耳掃除のときだけなのですね。


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