世界に一つだけの花


サクラがいのの花屋に来て、3回目のため息をついたときだった。

「何か悩み事でもあるの」
「・・・分かる?」
テーブルに頬杖をつくサクラは、ゆっくりと振り向く。
そう何度もため息をつかれたら嫌でも分かる、と思ったいのだったが、口には出さない。

「あのね、好きって言われたの」
「誰に」
「カカシ先生」
「・・・ふーん」
気のない返事と共に、いのは椅子から立ち上がる。
「驚かないの?」
「別に」

サクラは不満げにぼやいたが、いのの声のトーンは変わらない。
せっせと水桶を片づけ始めたいのを横目に、サクラが口を尖らせたときだった。
「ご本人の登場よ」
「え?」
顔を上げると、戸口に立つ一人の客がサクラの視界に入る。

 

「あれ、サクラ」
「カ、カカシ先生、なんでここに」
「気付いてなかった?うちにある花って、全部いのちゃんところで買ってたんだ」
目を丸くするサクラに、カカシは現在家に飾ってあるものと同じ花を指差して答える。
「そーなのよ。カカシ先生はうちのいいお得意さんなの。サクラは知らなかったかもしれないけど、私達、とっても仲良しなのよー」
とっても、の部分を強調して言うと、いのはカカシの腕に手を絡ませてべったりとくっついた。

「ねぇ、カカシ先生。今日はひまわりがお店に入ったの。先生好きだって言ってたわよね」
「うん」
「先生、マリーゴールドとデンファレも好きよね」
「うん。好き」
「私のことは?」
「好き」
誘導尋問をされるように答えたカカシに、サクラは体を震わせる。

「カカシ先生の馬鹿!!」
二人に向かって怒鳴りつけると、サクラはそのまま花屋の外へと駆け出していった。
残されたカカシは、唖然とした顔でいのを見る。

「な、何なの」
「さぁ」
「さぁって・・・」
「サクラの悩み事を解決させてあげようと思っただけなんだけどね。あの子、にぶいから」
戸惑うカカシに、いのは何故か苦笑して答えた。

 

 

 

「サクラ、ちょっと待ってよ」
サクラを追いかけたカカシは、商店街を抜けた路地でサクラを見付けた。
呼び掛けにも全く無反応だったサクラは、肩を掴まれてようやく立ち止まる。
「何で・・・・」

怒っている理由を訊こうとしたカカシだが、言葉は半ばで途切れた。
顔は確かに怒っている。
だが、サクラは泣いていた。
頬を伝う涙を隠そうとせず自分を見据えるサクラに、カカシはどう声を掛ければいいか分からなくなる。

「カカシ先生の好きって、そんなに軽いものなの」
「え?」
「私はお花やいのと、同じなんでしょ」
刺々しく言うと、サクラはカカシの手を振り払った。
「悩んでた私が、馬鹿みたい」

 

鼻をすすったサクラだが、涙はあとからあとから溢れてきた。
ポケットからハンカチを取り出したカカシは、涙まみれのサクラの顔を拭い始める。

「よく分からないけど、サクラが嫌ならもう言わないよ。サクラ以外には言わない」
頬をごしごしと拭かれながら、声が困っているのを感じる。
サクラは近くにあるカカシの胴に手を回し、思い切り強く抱きしめた。
いのがカカシと寄り添ったときに沸き上がった妙な不快感は、不思議と掻き消えている。

「で、何で泣いたの?」
「・・・分かんない。勝手に涙が出てきたの」


あとがき??
ただのぼけぼけカップルか。
カカシ先生まだ、言っていなかったんだな。好きって。
元ネタは、潮見知佳先生の『ゆららの月』です。今月号の。そのまんま。
前に同じような話書きましたが、それは忘れてください。

実は、「お花屋いのちゃんシリーズ」のいのちゃんはカカシ先生のこと好きだったのです。あれ。知らなかった。
いのカカなんて書いてるの、世界で私だけなんじゃぁ・・・。次はテンカカか。
しかし、いのちゃんはサクラのことも大好きなので、二人がうまくいくといいなぁと思ってます。今回ちょっと意地悪してましたが。


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