理想論
「カカシ先生、恋人いるの」
「んー、今はいない」
「前はいたんだ」
「まぁね」取り留めのない会話を続けながら、カカシとサクラは歩みを進める。
周囲には、蝉の声がうるさく響いていた。
炎天下の日中、サクラの服はもう汗でびっしょりだというのに、隣りのカカシは涼しい顔で本を読んでいる。
カカシが変温動物だと言われたら、信じてしまいそうな感じだ。だが、秘密主義のカカシが、こうして質問に答えて自分のことを話すのは珍しい。
それが嬉しくて、サクラは任務終了後もカカシと肩を並べて歩いていた。
報告書を提出する建物に付くまでは、まだまだ時間がある。
「じゃあ、今は恋人募集中なんだ」
「そうね」
「カカシ先生は、どんな人がタイプなの。ねぇねぇ」
しつこく服の袖を引っ張るサクラに、カカシは半ば呆れて彼女を見やる。「女の子って、そういう話題、好きだよね」
「うん!」
「俺は、静かで大人しくていろいろ詮索しない人が好きです」
そっけなく言うと、カカシは目線を書面へと戻す。
あまりに簡潔な返答に、サクラは頬を膨らませてカカシを見上げた。「それは、私に対する嫌味かしら」
「いや、本当の話」
「じゃあ、年上、年下、どっちが好き?」
「年上。ちなみに、ナイスバディーで色気のあるお姉ちゃんでお願いね」
「・・・・夜のお店のご指名じゃないんですけど」
息苦しい暑さと喉の渇きを感じて、サクラは目を覚ました。
場所は、リビングのソファーの上。
読むともなしに雑誌を眺めていたのだが、知らぬ間にうたた寝をしていたらしい。
遠くの風鈴が涼やかな音色を立てているが、サクラが横になっているソファーに風は届かない。思えば、カカシと歩いた5年前の夏の日も、今日と同じくらい暑かった。
だから、夢に見たのだろうか。
手を付いて半身を起こそうとしたサクラは、自分の体がまるで動かないことに気付く。
金縛りかと青ざめたのも束の間、腹に回された他人の腕を見て、サクラは小さくため息をついた。
エアコンを切っているというのに、自分の背中に寄り添って眠る人物がいる。
これでは、暑いのも道理だ。「カカシ先生―、手、どけてよ」
「・・・・ん」
「暑いんだってば!」
自分をしっかりと抱えている手をサクラは何とか外そうとする。
眠そうに瞬きを繰り返したカカシは、サクラと目が合うなりにっこりと微笑んだ。「ああ、おはよう」
「今、正午よ!」
「サクラがこんなところで寝てたからさぁ。起こしたら可哀相かと思って」
「だからって、先生が二度寝しなくてもいいのよ」
怒気を含んだ声で言うと、サクラはソファーから立ち上がったもとはといえば、休日の今日、カカシと外出するつもりでサクラはこの家を訪れたのだ。
だけれど、いくら騒いでも全く目を覚まさないカカシを待っている間に、こんな時間になってしまった。
「もう帰る」
言うなり、踵を返したサクラの腕を、カカシは難なく掴まえる。
寝起きのせいか、カカシは少しぼんやりとした眼でサクラを見つめた。「ねぇ、何で機嫌悪いの。俺が寝坊したから?」
「カカシ先生、昔、年上が好みだって言ったよね」
「・・・そうだっけ?」
「言った。それで、ナイスバディーで色気のあるお姉さんが好きだって。それなのに、何で条件に一つも当てはまらない私なんかと付き合ってるのよ。それって、変じゃない」
いきり立った声で言われたカカシは、不思議そうに首を傾げる。
「何でだろうーー」
だるそうなカカシの一言に、サクラは思いきり脱力した。
「じゃあさ、サクラは昔、どんな人が好みだって言ってたっけ」
「・・・精神的に大人で、しっかりしてて、無口で、陰があって、几帳面で、紳士的で、ちょっぴりシャイで」
思い出しながら話すサクラの声は、段々としぼんでいく。
視界の端に映るカカシのにやにや笑いの意味は、おそらくこういうことだろう。「カカシ先生と正反対の人」
「だよねぇ。それなら、サクラは何で俺と付き合ってるのさ」
「・・・何でだろう」
サクラは、先ほどのカカシと同じように首を傾げる。思えば、カカシとはいつの間にか一緒にいて、当然のように交際を続けていた。
理由は当然、好きだからだ。
だけれど、どうして好みと正反対の人に惹かれたか訊かれると、具体的な答えは出てこない。
好きだから好きというのは、理由とは違う気がする。
「ま、理想ってのは、そういうもんでしょ」
思案顔で腕を組むサクラに対して、カカシは笑いながら言う。
「口で何だかんだ言っていても、一緒にいてお互い幸せなら、それが本当の理想ってものなんじゃない」
「・・・先生って、時々妙に説得力のあること言うわよね」
「先生だもの」
椅子から立ったカカシは、近くに用意してあった荷物を持って玄関へと向かう。「じゃあ一緒に朝食でも食べに行こうか。サクラの好きなもの、ご馳走するよ」
「昼食だってば」
カカシの言葉を訂正しつつ、サクラはあとを追いかけた。
家の外に出ると、少しは風があるが、日差しはかなり強い。
気温も午前中より更に上昇したようだ。
それでも、繋いだ手を離そうと思わないのは、これが理想で幸せだからだろうかとサクラは思った。
あとがき??
と、いう夢を見まして、駄文にしてみました。便利な夢だわ。
サクラは17歳設定。
汗をかくからくっつきたくないよ、と思う私はラブ度が低いのですかね。
作品のラブ度はかなりあげたつもりなんですが、どうでしょう。(^_^;)
妙な駄文ですみませんでした。