エピローグ
仕事に復帰して数日、サクラはアカデミーの資料室に通い詰めていた。
手品好きな中忍について調べるために。よくやく捜し当てたファイルには、時の経過でセピア色に変色した証明写真が貼り付けてある。
カカシとは似ても似つかない顔の青年。
調書には彼の生没年月日と、長所、短所、趣味、任務の実行回数などが記載されているだけで、どのような人生を送ったかは具体的に触れてはいない。
身内の者が生きていれば話を聞けただろうが、それすら無理だ。サクラはため息と共に分厚いファイルを閉じた。
窓の外に顔を向けると、青い空と、強い風に流される雲が見える。僅かに開かれた窓が風の悪戯を招き、テーブルの上に置かれた栞がふわりと舞った。
慌てて手を伸ばしたサクラは、何とかその栞を掴まえる。
栞には、色は多少あせたが、綺麗な桜色のレンゲの押し花が貼り付けられていた。
「サクラちゃーん」
アカデミーを出てすぐに、サクラはナルトに呼び止められる。
「これからイルカ先生と一楽に行くんだけど、一緒に行かない?」
「遠慮しておく。今日、これからちょっと寄るところあるから」
「そう」
がっかりと肩を落とすナルトに、サクラは腕組みをして向かい合う。「ラーメンはいいけど、あんたイルカ先生におごってもらってばかりでしょ。今日は自分が払うって言ってみなさいよ」
「えー」
はっきり「嫌」と書いてある顔をサクラは人差し指で小突く。
「いつもお世話になってるんだから、たまには孝行しなさい。イルカ先生、きっと凄く喜ぶわよ」
「・・・・そうだね」
納得して頷くナルトに彼女はにっこりと微笑む。
「じゃあね」サクラは短く別れを告げると、ナルトのすぐ脇をすり抜けて行く。
その横顔を追い、ナルトは足を一歩踏み出した。
「サクラちゃん」
声に反応したサクラは、立ち止まってナルトを振り返る。
真顔だったナルトは、サクラと目が合うとすぐに表情を和らげた。「また、明日ね」
サクラの瞳が、軽く見開かれる。
橋の上で聞いたものと同じ、再会を誓う約束。
少しだけ緊張した空気が流れたが、あのときとは違い、サクラはしっかりと頷いた。「うん。またね」
微笑するサクラを見詰め、ナルトは嬉しそうに手を振る。
駆け出したナルトの後ろ姿が小さくなるまで、サクラはその場所で佇んでいた。「・・・さてと」
サクラはくるりと反転すると、ナルトと反対の方角へと歩を進める
「カカシ先生、何が好きかな」
手みやげを買うために、サクラは町の繁華街への道を軽やかな足取りで歩く。
自然と口から漏れたのは、いつか歌った童謡。
風変わりな幽霊が背を押してくれた感触が、まだ残っているような気がする。柔らかな春の日差しが、サクラの体に降り注いでいた。
あとがき??
感無量!!!
終わったー、終わったー、終わったよーー!!
もう、無事終わっただけで満足です。終わらないまま閉鎖かと思いました。(涙)
これさえ終われば、もう心残りはありません。良かった、良かった。
完成に2年近くかかりました。これを読んで、映画の『四月怪談』を観ようかな、と思ってくれる人がいたら凄く嬉しいです。
柳葉敏郎&中嶋朋子、主演。
DVDにもなってます。