青い鳥


「カカシ先生、これ私が作ったの。食べてね」

休日、カカシの家を訪れたサクラは物を渡すと、すぐに踵を返した。
「え、もう帰っちゃうの」
「うん。他の人にもこれ配らないといけないし。またね」
サクラは名残惜しそうに伸ばされたカカシの手を気にすることなく駆けていった。
渡された物を片手に、カカシは玄関で佇んでいる。
ここ最近、サクラはカカシの家で余暇を過ごしていた。
てっきり今日も長居をすると思っていたカカシは、すっかり肩透かしをくらった感じだ。

桜色の紙袋を開くと、中からまだ温かい、焼きたてのカップケーキが出てきた。
いい匂いにつられて一口かじってみる。
それは存外に美味だった。
意外だなぁとサクラに対して失礼なことを考えながら、カカシは急いでいた風だったサクラの行き先に思いを巡らせた。
サクラの行きそうな場所。
・・・サスケのところだろうか。
自ら連想したその人物名にカカシは顔をしかめる。
サクラとサスケが仲良く会話しているところを想像するだけで、気分が滅入ってくる。

やっぱりさっき捕まえておくんだった。

それから何をする気にもなれず、カカシはソファでごろごろと寝返りをうっていた。
ここのところずっとサクラが遊びに来ていたから、自分がどのように休日を過ごしていたのか忘れてしまった。
サクラが側にいないだけで、自分は世界一不幸な男に思える。

「幸せってなんだっけ」
カカシは一人呟き、自問する。
今までは漠然としすぎて分からなかったが、現在、自分にとっての幸せとはサクラが側にいることだ。
サクラがいれば幸福になれる。
よってサクラがいない今の状況は間違っている。
「サクラを迎えに行こう」
他人には理解不能な思考で結論を出すと、カカシは立ち上がりさっそく支度を始めた。

 

カカシが思ったとおり、サクラはサスケの家へ向かっていた。
「もう帰ったぞ。ナルトのところに行くと言っていた」
サスケの言葉に多少ホッとしながら、カカシはナルトの家へ向かう。
「サクラちゃんはこれ渡すとすぐ帰っちゃったよ」
玄関から顔を出したナルトは頬張ったカップケーキで口をもごもごとしながら答えた。

どうやらサクラは手作りのカップケーキを知り合い全ての人に配って歩いているらしい。
カカシはナルトから聞き出した情報を頼りに、次の目的地へ急いだ。
だが、返ってきた言葉は前2件と同じもの。
「サクラはもういませんけどー」
こうしたことを4、5回繰り返したが、どうしてもサクラにたどり着けない。
行けども行けども会えないことに業を煮やしたカカシは、最終的にサクラの家で待ち構えることにした。

待つこと、3時間。
サクラが帰ってくる気配は全くなかった。
どの家で引き止められているのかは分からないが、こう会えないと、もしかして一生会えないのではと馬鹿な考えが浮かんできてしまう。
嫌な考えを振り払いながら、カカシはとぼとぼと家路についた。

 

「あー、帰ってきた!どこほっつき歩いてたのよ」
自宅の前まで来ると、玄関先に座り込んだサクラがカカシを指差して甲高い声をあげる。
「ずっと待ってたんだからね。早く鍵開けてよ」
サクラはカカシの飛びつくと、頬を膨らませて言った。
「今日はもう会えないかと思っちゃった」
それはこっちの台詞だと思いながら、カカシはサクラに訊ねる。
「どうしてここにいるんだ」
カカシが咎めているように聞こえたのか、サクラは少し哀しげな顔になった。

「迷惑だった」
「いや、そうじゃないけど。ケーキはもう貰ったし」
慌てて言うカカシに、サクラは安心したように表情を和らげる。
サクラは鞄を探ると、先ほどカカシに渡した物と同じ紙袋を取り出した。
「これ、私の分、カカシ先生の家で食べようと思って」
目の前に差し出された紙袋を前に、カカシの頭にある疑問が浮かぶ。

「それなら最後に俺の家に来て、一緒に食べれば良かったじゃないか」
カカシのもっともな意見に、サクラは頬を赤くしながら、俯き加減で答えた。
「だって。カカシ先生には温かくて美味しいうちに、一番に食べてもらいたかったんだもん」

可愛らしいことを言ってくれるサクラを、カカシは思い切り抱きしめる。
そして今日一日の行動を思い出して、急に可笑しくなってきた。
気付かなかっただけで、幸せはすぐ身近にあったらしい。


あとがき??
カカシ先生の幸せ(サクラ)探し。
ポリアンナの「良かった探し」みたいだな。
鈍いカカシ先生は書いてて楽しいのですよ。
というか、これ、1時間かかってない。(笑)
もっとじっくり書かなきゃ駄目ねぇ。

私もちょっと幸せ探して旅に出ます。ケセラセラ〜。


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