ピンク・フラミンゴ
ある日突然、ピンク色だった彼女の髪が黒くなった。
強烈な違和感。
それだけでまるっきり別人のようだ。
彼女の印象がピンクそのものだったからかもしれない。「何で」
理由を訊くと、彼女は笑って言った。
「髪の色がうざいって、あの人に言われたから染めたの」
それはまさしく不敵な笑みといえる笑いだった。
彼女は微塵も後悔をしていない。
わざわざあいつと同じ髪の色にしたのは、彼女なりの意思表明だろうか。
そんなことをしたって、あいつは振り向いてくれないだろうに。
だが、彼女はそれでも満足なのだと言う。世間ではこういうのを、健気だとか一途だとかいうのかもしれない。
だけど、俺にしてみれば「馬鹿だな」の一言だね。
思考が口をついてそのまま出ていたらしく、彼女は俺を見上げてにやりと笑った。
「そうよ。私馬鹿なの」
どんな笑いであろうと、笑顔の彼女は可愛らしい。
馬鹿だと自覚している彼女のことを好きな俺は、たぶんもっと大馬鹿なのだ。
その日の任務はとあるお屋敷のペンキ塗り。
依頼人である主人に、壁をピンク一色にしてくれと頼まれた。
なんて悪趣味な。
平屋建ての日本家屋の壁をピンクにしろだとさ。
家主夫婦は新婚さんなので、頭のネジが一本どこかにいってしまっているのかもしれない。
何にしろ、幸せなことは良い事だと思う。せっせと作業を続ける下忍達を、監視という態の良いサボりでのんびりと眺める。
彼らの頑張りで、段々とピンク色になっていく壁。
いいね。
やっぱりピンク色はいいや。
彼女の髪がピンクだったから好きな色になったんだけど、今では髪がピンクだったから彼女を好きになったのかと思うほど好きな色だったりする。
黒い髪の彼女にはいいかげんうんざりだ。
てっきりすぐに飽きて元の色に戻すかと思ったら、彼女は意外に頑固だった。
壁とペンキの入っている缶を交互に見るうちに、良い案が浮かんできた。「おい」
側まで行って呼びかけると、彼女は何の用、とばかりに不機嫌な顔で振り返る。
単調な作業に飽き飽きしている様子だ。
「手伝ってあげる」
今まで言ったことのない俺のその言葉に、彼女は訝しげに俺を見る。
だが、俺が手を伸ばすと、新しいペンキの入った缶を俺に差し出した。
受け取った俺は彼女に笑顔を向ける。バシャンッ
俺にペンキを頭からぶっ掛けられた彼女は、硬直して動きを止めた。
何が起きたのかすぐには理解できなかったらしい。
彼女の頭と身体半分がピンクに濡れる。
まぁ、満足かな。
手で顔を拭った彼女は、ゆっくりと声を出した。
「何、してるの」
静かな口調。
どうも彼女の精神は、すでに怒りを越えたところにまでイッてしまっている。「俺ね、ピンクの髪のお前が好きなんだ」
俺は極上の笑みを浮かべて彼女に言った。
ペンキまみれでよく分からないけれど、彼女はたぶん呆気にとられた表情をしているはずだ。
「・・・・ヘタすると死ぬわよ、これ」
彼女はピンクに染まった手で自分を指差す。
「うん。まさに、命がけの告白ってやつだねー」
俺がキシシッと笑い声をもらすと、やがて彼女も可笑しそうに声を出して笑った。
遠くから、笑いあう俺達を同じ班の奴らが呆れたように見てる。
早急に身体を洗った彼女は死ぬことはなかったけれど、次の日、小さな事件が起きた。
彼女の髪は黒ではなくなっていた。
かといって、元のようなピンクでもない。
目の覚めるような白銀の髪。
はっきり言っちゃえば、俺と一緒の色。「命かけるなら、自分の命をかけてよね」
彼女は意地悪な笑みを浮かべながら、俺にこうのたまわった。
そして髪がどんな色だろうと、笑った彼女はやっぱり可愛かったのだ。
あとがき??
構想1分、執筆時間15分。パッパラパーな話。(笑)
ポップな話にしようと思ったんだが。うーん。わけ分からん。
ただ、このタイトル使いたいーと思ったら、こんな話になった。
ペンキは身体に悪いので、良い子は真似しないように。書いてる私にもよく分からないのですが、一応解説。
サクラちゃんはカカシ先生の気持ちに応えたんだと思います。(白銀色ってことで)
だけど、ペンキかけられたことを怒っていて、ピンクにはしなかったんですね。たぶんね。
ところで、先生の髪って白、それとも銀??あ、しまった。一度も人名使ってなかった!
でも、なんかこの話すっきだなぁ。変なの。