運命の人


まだ下忍のガキだった頃、俺には好きな娘がいた。
アカデミーの同級生で、彼女の方がだいぶ年上。
その桜色の髪と同じ名前をした女の子。

「サクラ!」
「カカシくん。どうだった?」
「もちろん合格したよ」

エヘヘっと得意満面でVサインをして彼女に答える。
ここは病室。
同級生といってもサクラはすぐに入院してしまったので、一緒に学んだ期間はとても短い。
子供の俺にはわからなかったけど、とても難しい病気のようだ。

「そう、おめでとう」
サクラは自分のことのように喜んでくれた。
それが俺には何よりも嬉しかった。
中忍試験に合格した俺は、誰よりもまず彼女にその報告をしに走ってきたのだ。
もちろん病院内では走らず、なるべく静かに歩いてきたつもりだ。

「本当に凄いね。このままだったら、あっという間に上忍になれちゃうんじゃない?」
羨ましいな、と忍者になることに憧れていた彼女が言った。
その笑顔はいつもと違って寂しそうに見えた。

サクラの願いはただ一つ。
健康な体。
カカシくんと一緒に任務をこなしたり、冗談いって笑いあったり、ケンカしたりしたかったな、と遠い目をして言った。

そんなサクラの顔を見ていたくなくて、何とか元気づけたくて、俺は一世一代の告白を決意した。

「俺さ、頑張って絶対早く上忍になるから、そうしたら・・・」
「そうしたら?」
言葉を切った俺にサクラが不思議そうに訊く。

「俺の嫁さんになってくれないかな」

思い切って言うと、彼女はとても驚いた顔をした。
でもすぐに、さっき俺が試験に合格したと言ったとき以上に嬉しそうな顔をして笑った。
その時の彼女の笑顔を、俺は一生忘れないだろう。

「今度生まれ変わったらお嫁さんにしてね」

俺は遠まわしに断られたのかと思って、少しふてくされて言った。
「サクラの生まれ変わりだって俺が気づかなかったらどうするんだよ」
「大丈夫。ちゃんと目印残しておくから。カカシくんならすぐ気づいてくれるわ」
サクラは優しく笑ってそう言ったかと思うと、急に瞳を潤ませた。
「ごめんね。嬉しくて」
俺は来世じゃなくて、今生でサクラと幸せになるんだと言いたかったけど、サクラの涙を見たら、なにも言えなくなってしまった。

後になって思えば、サクラは自分の余命が短いことを悟っていたのかもしれない。
その夜だった。
容態が急変したサクラが息を引き取ったのは。

忍者なんて、彼女が憧れていたように、格好いいだけのものじゃない。
現に俺は暗殺部隊で数え切れないほど人を殺したし、おおっぴらには言えない汚い任務もたくさんしてきた。
それでもこの仕事を続けてきたのは、忍者をやめてしまったら、もし彼女が生まれ変わっても俺に会いに来てくれても俺だって気づいてくれないんじゃないだろうかと思ったから。
ただの子供の約束をいつまでも信じて待っている。
我ながら馬鹿だと呆れてしまう。

 

そして今。
自分の隣には彼女と同じ、里では珍しい桜色の髪をした少女がいる。
性格はおとなしかった彼女と違ってじゃじゃ馬で、体だって病気で死んだ彼女とは違い健康そのもの。
相違点をあげればきりがない。
同じなのは髪の色とその名前。
でも、何故か俺はサクラがあの彼女なのだと確信してしまっている。
思い返してみると、彼女がそうありたいとよく願っていた理想そのままの姿じゃないか。
だから例の質問をしてみる。

「サクラ、いつか俺の嫁さんになってくれないかな」
「え〜、駄目。私はサスケくんと結婚するから」

サクラは俺が冗談を言っているのだと思って、即答した。
でも、暫くすると俺に笑顔を向けてこう言った。

「今度生まれ変わったらお嫁さんにしてよ」

予想通りというか、なんというか、昔と同じ答えが返ってきてしまった。
でも俺は二度も次を待つ気はないんだよね、と思いながらサクラの頭にポンッと手をおいた。


あとがき??
なんだろう。これは。一応カカサク?
たいして時間はかからなかったですよ。一時間??最短だ!
私がカカサクにどんな夢見てるかよく分かる作品だわ。
カカシくん当事6歳!?ませてる〜!!
ちびカカシの口調がナルトっぽいのは勘弁して。ちびカカシ、私には想像不可。
またしてもカカシ先生の過去を捏造。
済みません、済みません。


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