ゆる想い


 「私ってそんなに魅力ないのかしら」
気落ちしたサクラは俯きながら呟く。
任務終了後、いつものようにサスケを誘ったサクラは、いつものように断られたのだ。
公園では付近に住む主婦達が子供を遊ばせている。
走り回る子供を視界の端に入れながらサクラはため息をつく。

サクラの隣りのベンチに腰掛けるカカシは愛読書を開いたまま答えた。
「そんなことないよ。サクラは十分可愛いと思うぞ」
「そうかなぁ」
サクラはまだ自信のない声を出す。
「私なんか、おでこ広いし、短気だし、すぐ落ち込むし、きっと一生彼氏なんてできないわよ」
自分で言っていて情けなくなってきたのか、次第にサクラの瞳に涙がにじんできた。
空気を察したカカシは、書物から目を離しサクラの頭を力強くなでる。
少し乱暴なその仕草にサクラが顔をあげると、カカシは彼女を見てにっこりと笑った。

「そういうところ全部ひっくるめてサクラなんだろ。サクラのこと分かってくれて可愛いと思ってくれる奴は絶対に現れるって」
「・・・カカシ先生」
「俺はサクラのこと好きだぞ。だから頑張れ」
カカシがもう一度サクラの頭をポンポンと軽く叩くと、サクラはようやく微笑んだ。

 

カカシは知らなかった。
この時、サクラを元気づけるために言った何気ない言葉が、後々まで響いてくることを。

 

「カカシ先生、私と付き合って!!」
翌日、サクラはカカシに堂々と告白をした。
カカシは言われた意味を理解するまでに暫らく時間を要した。
「・・・え?」
「え、じゃないわよ。カカシ先生昨日私のこと好きって言ってくれたからOKよね」
「いや、言ったけど、サクラと俺とじゃ年が離れてるだろ」
混乱する頭でカカシは何とかサクラを傷つけないよう言葉を選びながら喋る。

「大丈夫よ、愛に年の差なんて関係ないわ!お互いを思う気持ちさえあれば、どんな障害だって乗り越えられるわよ!!障害のある恋!素敵だわ!!」
サクラは瞳を輝かせながら力説している。
何が大丈夫なのか。
大体俺の方の気持ちはどうなるんだ、というカカシの声をサクラはすでに聞く耳を持たない。
崇高な愛に目覚めたという勘違いに、サクラはすっかり陶酔している。

「おーい、サクラ。戻って来―い」
カカシが小さく呼びかけると、掌を組み合わせてうっとりとしていたサクラが振り返った。
「私達の愛は無敵よ。カカシ先生、頑張りましょう!」
サクラはカカシの手を掴むと、がっしりと握り締めた。
その手を無碍に振り払うことのできないカカシは困惑気味にサクラを見詰めた。

 

以後、サクラは何かとカカシのまわりをついて歩くようになった。
同じ班なのでもともと一緒に行動する時間は長かったが、私生活でもまとわりつかれると本当に年がら年中側にいるという感じだ。
カカシはこの時になってようやくサスケの気持ちが分かったような気がした。

 

職員室で、カカシは大きなため息をつく。
隣りの椅子に座っていた紅が面白そうに話し掛けてくる。
「何、悩み事でもあるの」
「かもねー」
カカシはだるそうに答える。
「可愛い彼女ができたらしいじゃないか。何を悩む事があるんだ」
話を聞いていた他の上忍の言葉に、室内にいた数人がどっと笑った。
カカシは不機嫌そうに顔をしかめる。
始終一緒にいるものだから、教師の間でもカカシとサクラのことは知られていた。

「彼女じゃないし、付き合っているわけでもないぞ」
カカシが憤慨して反論すると、腕にしている時計のアラームが鳴った。
カカシは時間を確かめると席を立って扉へ向かう。
「あれ、どこ行くんだ」
同僚の問い掛けに、カカシは振り返ることなく答える。
「公園。サクラが来る時間なんだ」

 

いそいそと職員室をあとにしたカカシに、上忍達は皆、首を傾げている。
扉が閉まると同時に呟かれた紅の言葉が、皆の気持ちを代弁していた。

「あれは、付き合ってるって言わないのかしら」


あとがき??
タイトルは「仙八先生」の主題歌。さとう宗幸が歌ってます。(「青葉城恋唄」で紅白出てるのよ)
母がさとうさんのファンなんだけど、私は彼の歌でこの歌が一番好きだったりする。
「君が幸せであればいいと 知らずに涙こぼれてた」って歌詞の曲。
「萠ゆ=芽がでる」なので、恋が芽吹くという意味で使いました。
杜の都、仙台の代表的な歌手といえば、やはりさとうさんですわ。

カカシ先生、もう尻にしかれてる感じ。
今回サクラのモデルになったのはハレグゥに出てくるユミ先生。ってことは、カカシ先生がハレか。(笑)
最近シリアス路線ばかり続いたから、明るい話が書きたかったのですー!
テスト勉強しないでこんなの書いてる場合じゃないんですけど。あわわ。

ちなみに「仙八先生」は「金八先生」の後にやっていたドラマ。
シブガキ隊が生徒役で出演していた。さとう宗幸が仙八先生の役。
ヤックンが同級生を刺しちゃったり、先生と恋に落ちたり、泣けるエピソードもかなり多かった。
第一話では生徒達が教科書を焼くという暴挙に出たのだが、さとうさんの演技が下手で(だって歌手だし)生徒を止めながら顔は僅かに笑っていたのが印象的だった。
半年のはずが1年に放映が延び、好評のドラマだったらしい。
古いな。私も母がファンじゃなかったら、絶対覚えてないだろうしね。
って、さとう宗幸さえ、友達で知ってる人誰もいないよ。シクシク。


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