THE LUCKY STAR ☆☆☆


「カカシ先生―、また遊びに来ちゃった」
玄関先でにっこりと笑うサクラに、カカシは一瞬困った顔をし、曖昧な笑顔を見せた。
カカシのその表情をみた瞬間、サクラはぴんとくる。
これからカカシの家に来訪者があるのだと。
しかも、女の確率が高い。
一緒の班で行動しているおかげで、微妙な表情の変化からその感情を読み取ることができるようになった。

「あがるわよ」
分かっていながら、サクラは悪戯な笑みと共に無理にカカシを押しのけ靴をぬぐ。
「今日はこれから人が来るんだよ」
予想通りのことを言われたが、サクラは全く引き下がらない。
「大丈夫よ。その人が来たら帰るから」
簡単に嘘をつく。
「本当だろうなぁ」
「本当本当」
にこにこ顔で即答されては、カカシも折れるしかない。
「お茶入れるから、先生座っててね」
勝手知ったる我が家という足取りで、サクラはキッチンに向かう。
カカシは何故か不安な気持ちだったが、言われたとおり椅子に腰掛けた。
そして、カカシの不安は数分後、見事的中することになる。

 

やがてチャイムが鳴り、玄関に向かうカカシのあとをサクラもついて歩く。
扉を開けてその場に立っていた女を、サクラはしげしげと観察した。
髪の長い、真っ赤な口紅が目を引くけばけばしい女。
こんな頭の悪そうな女がカカシ先生の好みなのかと思うと幻滅しちゃう。
サクラはげんなりとした表情をしながらも、内心「しめた」と思わないでもなかった。
彼女が相手なら、十分勝算はあるとふんだのだ。

「何、この子。親戚の子?」
女はサクラを指差して訝しげな表情をした。
その無遠慮な態度に、サクラは不機嫌そうに片眉を上げて女を見上げる。
「ああ、サクラは俺の」
「彼女なんです!」
カカシの言葉を遮るような大きな声に、女だけでなくカカシも目をむく。
カカシが口をはさむ前にと、サクラは早口で捲し立てた。
「彼、こう見えても実は小さい女の子が好きなんですよ。あなたみたいな化粧品の匂いをぷんぷんとさせてるおばさんの相手は本当は嫌だって言ってました。どんなに化粧でごまかしても元が不細工だからたいして変わらないし、それなら若くてぴちぴちした肌の女の子の方が全然マシだって」
サクラの話の途中から、女の手がわなわなと震えだす。
「サ、サクラ!!」
「今日だってこれから二人で、フガッ」
慌てたカカシがサクラの口元を押さえ、彼女の口上はようやく中断される。
だが、時はすでに遅かった。
女の手が高々と振り上げられる。
「変態!!」
カカシの頬が派手な音をたてて鳴った。

 

「お前なー。一体俺に何の恨みがあるってんだよ」
「先生のためにやったのよ。カカシ先生とあんな礼儀知らずの女じゃ絶対につりあわないわよ」
サクラは悪びれもせずしれっと言ってのける。
腫れた頬を押さえながら、カカシはため息をついた。
「反省の色なし」
パシンと軽くサクラの頭を叩く動作をする。
力が入っていないからまるで痛くない。
少しはしおらしげな態度を見せた方がいいだろうかと、サクラは洗面所から濡れタオルを持ってくる。
タオルを頬にあてながら、カカシは軽くうめいた。

「でも先生、なんでよけなかったの?」
カカシの隣りのソファに座りながら問い掛ける。
上忍ならば簡単なことのはずだ。
不思議そうな顔をするサクラに、まだ少し怒っているのかカカシは憮然と答える。
「俺がよけたら彼女もっと怒っちゃうだろ。そしたら怒りの矛先がサクラに向かうかもしれないし」
殺し文句をさらりと口にするカカシに、サクラは破顔した。
カカシのそういうところが、サクラは好きなのだ。

任務のときはどこか突き放した厳しさを感じるのに、普段は生徒達に平等に優しい先生。
サクラはいつからかその温かくて居心地のいい場所を独り占めしたいと思い始めていた。
だから、こうして抜け駆けしてカカシの家を頻繁に訪れている。
今はまだ無理だ。
カカシはサクラを生徒の一人としか見ていないし、年端のいかない少女を相手にする趣味もない。
だけれど、これから先、どうなるかは分からない。

サクラはカカシに寄り添うようにぴったりとくっついた。
「先生」
甘えた声を出すサクラに、カカシは冷たく言い放つ。
「何だ。今さら謝っても許さないぞ」
「謝らないもん。先生は私のだもん」
サクラはムッとした顔をすると、よりカカシに身体を密着させる。
子供じみたサクラの発言に、カカシはようやく相好を崩した。
幼い頃に経験する、仲の良い友達を他の子に奪われたくないといったたぐいの、可愛らしい嫉妬だと思った。
「我が侭な生徒だなぁ」
言いながら自分の首筋に抱きついているサクラの背に手を回す。

あどけない少女の面を見せながらも、時たまちらりと女の顔がのぞくことにカカシは気付いていない。
ゆっくりとでいい。
徐々に、徐々に、自分の存在を浸透させていく。
そして。
いつか絶対に私のものにしてみせるわ。
サクラはぎゅっと力をこめてカカシを抱きしめた。


あとがき??
サクカカ!カカシ先生はサクラにまだ恋愛感情持ってません。でも、何故かラブラブ。(笑)
ただの教師と生徒。新鮮だわ!唐突にそんなのが書きたくなりました。

タイトル、あまり意味ないです。
ブリグリの『THE LUCKY STAR ☆☆☆』を聴いていて思い浮かんだ話だからそのまんまつけた。
内容も曲にそってるかな?(笑)英語のタイトルは使わないようにしてるんですけどね。
夏コミ二日目、列に並びながら暇つぶしに考えた話。楽しかったからまたサク→カカ書こうかしら。


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