嘘の本当


「俺のことを好きになったら駄目だよ」

 

そういうことを言うカカシ先生は、とっても性悪だと思う。
もう手遅れなのに。
私はとっくにあなたに恋してるの。
そんなことを言われたら、どうしたらいいのか分からなくなってしまうわ。

どうして駄目なの。

訊ねると、カカシ先生は寂しげに笑って答えた。
「俺は、殺しすぎたんだ」
だから、幸せになったらいけない。
そんな自分が傍にいれば、きっと周りの人間を不幸にしてしまう。
カカシ先生は、そう言いたいらしい。

自称、地獄落ち決定のカカシ先生。
私の目にはとても苦しんでいるようにみえる。

まだ充分じゃないの。
癒されてはいけいないの。
いつになったら許されるの。

答えのない疑問。

カカシ先生が過去に、どんなことをしていても、私は目の前にいる優しい先生しか知らないの。
私はカカシ先生を信じるよ。
カカシ先生が理屈に合わない悪行は絶対にしないって。
人を殺すのは悪いことだけど、何か理由があってのことのはずだわ。

 

もっと、もっとカカシ先生の身近な存在になりたいのに、先生は心のどこかで私を拒んでる。
いつも恐々といった風に私に触れる。
勘違いも甚だしいわ。
私はそんなに綺麗な人間じゃないのよ。
怒りや嫉妬や妬み、人並みの感情が私にはちゃんとある。
でも、カカシ先生にはそうした私の醜い部分は見えていないみたい。
子供は皆天使だとでも、本当に思っているのかしら。

構わないのに。
カカシ先生が本当に地獄に落ちる人だったとしても。

カカシ先生と一緒なら、地獄だってどこにだってついていく。
男の人って、皆、こうも意気地なしなの。
私だったら違うわ。
立場が逆だったとしても、私は好きな人の手を離したりしない。
相手が嫌だって言ったって、地獄の底まで引きずり込んでみせる。
場所がどこだって、好きな人が傍にいる以上の幸せなんてないわ。

 

最初にあんなことを言ったくせに、カカシ先生は時々私に訊いてくる。
「サクラ、俺のこと好き?」
「嫌い」
即答すると、カカシ先生は笑いながら私の頭を撫でる。

つくわよ、嘘くらい。
いくらでも。
カカシ先生の傍にいられるんだったら、一生だってついてみせる。
カカシ先生が意地悪なこと言うからいけないのよ。
どんなことを言っても無駄なのに。

私は絶対にカカシ先生を離さないんだから。


あとがき??
喜多尚江先生の『イチゴとメロンとオバケ』が元かな。内容全然違うけど。

って、これ書いてる今まさに、TVからサントリー南アルプスの天然水のCMが流れてきて笑ってしまった。
「僕は君のことを汚してしまう」「嘘だ。君の心は澄み切っているんだ」って女子高生(中学?)が演劇の練習してるやつ。(台詞うろ覚え)
なんか、この話のことかと思ったよ。(笑)


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