子供ほしいね


気持ち悪い。吐きそう。

その日のサクラは寝不足から体調は最悪だった。
朝から顔色は青白かったが、体術の訓練の最中についにしゃがみこんでしまった。
「おい、大丈夫か」
カカシが心配そうに近寄ってくる。
「どうせまた無理なダイエットでもしてるんだろう。馬鹿だなぁ」
カカシのその言葉にカチンときたサクラは少々悪戯を考えた。
それはちょっとビックリさせてやれ、程度の嘘。
サクラは無理して真顔をつくって一言。

「先生の子よ」

すぐ後に「なーんてね」と言おうとしたのだが、サクラは続きの言葉をいえなくなってしまった。

 

「一体なんなのよ!」
あの瞬間サクラが見た、なんとも表現しにくいカカシの表情。
しいていうなら、凄い嫌そう?
その顔になんだかむかついたサクラは、カカシにびんたをくらわせてこうして訓練を放棄して自宅に向かって歩いている。
自分でもよく分からないが、サクラの気持ちはとても傷ついてた。

「サクラちゃーん」
サクラの後ろからナルトが全速力で走ってくる。
「ナルト」
サクラに追いつくとナルトは話しにくそうにもじもじとする。
「えーと、その、さっきの話」
「やだ、聴いてたの?」
サクラは全身から火が出る思いだ。
でもサスケに聞かれるよりはマシだったと考え直す。

「ごめん。聴こえちゃった。あれってば」
「嘘よ嘘。嘘に決まってるじゃないのよ」
「そ、そうだよね」
ナルトはホッとした表情でそう言った。
「なに、心配して追いかけてきてくれたの」
「うん」
「有難う。ナルトは優しいね」

それに比べて、カカシ先生は追いかけても来てくれない。
そう思うと、サクラは先ほどのカカシの顔を思い出して悲しくなってきてしまった。
「サ、サクラちゃん、なんで泣くの?」
「あんたが優しいからよ。馬鹿」
「ごめん」
ナルトは律儀にサクラに謝る。
そして、その二人の様子を見守る影が一つ。

「ナルトーー!!」
「え」
ナルトは振り返るのと同時にふっとばされた。
なにが起きたか分からず呆然とするサクラ。
目の前にカカシがいることから考えて、サクラはナルトがカカシにぶん殴られたのだと理解する。
憐れ、ナルトは完全にのびてしまっている。

「え、ちょっと、カカシ先生、なんでナルトを」
「サクラ!」
「はい」
カカシの鬼気迫るその声の迫力に、サクラはそのまま返事を返す。

「結婚しよう」
「・・・・・はぁーー!?」
突然のその申し出にサクラの頭は混乱するばかりだ。
驚きの連続で涙はすっかり止まっている。
「あの、話がよく」
「いや、言わなくてもいい。相手はナルトなんだな。きっとあいつが嫌がるサクラを無理やり。クッ」
「いえ、そうでなくて」
「ごめんな。俺がちゃんと注意してれば。だけど、俺が大切に育ててやるから、安心しろ」

サクラの言葉など全く耳に入っていない様子で、カカシは熱弁する。
「さぁ、行くぞ」
言うが早いかカカシはサクラの腕をガシッと掴む。
「は、行くってどこへ」
「決まってるだろう。役所だ」
「役所って何をしに」
「婚姻届出しに」
冗談でしょーーーーーーっと内なるサクラは絶叫するが、本人は口をパクパクさせるだけで、声が出ない。

「せ、せ、先生、ちょっと落ち着いて」
サクラがひきつった声を何とか絞り出すと、カカシも納得したように頷いた。
「そうか。そうだよな。その前にまだすることがあったよな」
「あああ、あの、することっていうのは」
「サクラの両親にご挨拶」
いきなりそんなこと言ったら、うちの両親卒倒しちゃうわよー、やめてーーーっと内なるサクラが再び絶叫する。

サクラはカカシに引きずられて歩きながらも、なんとかカカシと止めようと頭を働かせる。
何故だか知らないが、カカシ先生は今、極度の興奮状態だ。
なにを言ってもまともに聞いてくれそうにない。
発端は自分のあの「子供ができた」発言からだから、その誤解を解けばこの騒ぎは収まるはずだ。

「先生、カカシ先生ちょっと私の話聞いて。お願いだから」
「なに」
サクラが必死に訴えると、カカシは顔を半分だけ彼女の方に向けた。
その目は血走っていて、相当怖い。
それでも勇気を振り絞ってサクラは告白した。

「先生、ごめんなさい。子供ができたってのは嘘なの」
「嘘?」
カカシはようやく立ち止まる。
「そう。ナルトとはなんでもないのよ」
「・・・じゃあ、子供は本当にいないんだな」
サクラの肩を掴んでその顔を覗き込んだカカシに、彼女は大きく頷いた。
するとカカシは体の力がいっきにぬけたように、座り込んでしまった。
「せ、先生?」
「良かったー」
カカシはサクラを抱きしめると、心底安心したように呟いた。
なんにしろ、カカシが本当にサクラを心配していたという気持ちはサクラに伝わってきた。
思いがけず瞳が潤んできてしまう。
「大体、先生身に覚えないくせになんであんなに嫌そうな顔したのよ」
サクラは涙まじりの声でカカシを非難する。
「身に覚えがないからだろ」

そういえば、そうかもしれない。
サクラは嫌な顔をするということは自分が嫌いなのと早合点したが、カカシはサクラが他の誰かの子供を身ごもったということが嫌だったのだ。

 

すっかり落ちつきを取り戻したカカシと、サクラは手をつないで歩く。
7班のメンバーはバラバラになってしまい、すでに訓練どころではなくなってしまっている。
たまたま任務のない日だったから良かったものの、普通なら火影さまに大目玉を食らっていたことだろう。

「ねぇ、先生。さっき結婚しようって言ったの本気だったの」
「うん」
「なんで」
「サクラが好きだから。誰にも渡したくなかったんだ」
先ほどの失態を見られ、観念したのかカカシはあっさりと言った。
それはサクラがずっと欲しいと思っていた言葉。
サクラは嘘も言ってみるものだと、不謹慎にも思ってしまった。

「私がナルトのこと好きだとかは考えなかったの」
「考えなかった」
「・・・じゃあもしかして私が先生のこと好きだと思ってたとか」
「それもあんまり考えてなかったかなぁ」
その答えにさすがにサクラは呆れてしまう。
自分がカカシへ寄せる思いに気づいていないのに、あそこまで暴走していたのかと思うとサクラは末恐ろしいものを感じる。
小さい子供のわがままならともかく、上忍がそれではまずいだろう。

「でもちょっと強引じゃない?」
「すまない」
さすがに先ほどの自分の行動は性急だったと反省したのだろう。
少しばかりしょげてしまったカカシにサクラは笑顔を向ける。
「しょうがないから、私いつか先生のお嫁さんになってあげる」
だから子供はもう少し待ってね、というサクラの言葉にカカシは珍しく顔を赤くした。


あとがき??
先生、大暴走。(爆笑)いやぁ、楽しい。そして、ナルト、ごめん。
あの子あれからどうなったんだろう。(ひどい)
タイトルは尊敬する三谷幸喜脚本の昔のドラマのタイトル。

ところで、木ノ葉の里っていくつで結婚できるのかしら。やっぱり16歳くらい??
ラストのカカシ先生はそんなに純情じゃないだろうとか思ってしまう。
書いてるこっちが赤面です。
もう少しってどれくらいかなぁ。(死)


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