Its gonna rain!


あの人が待ち合わせの時間に遅れるなんて、いつものこと。

仕事でもプライベートでも、変わらない、遅刻癖。
でも、たまには私よりも早く来て、待っている。
そんなことがあっても良いと思うのだ。
今日のような日は、特に。

雨が降り出してから、もう1時間は経過している。
雨粒をしのぐために木陰に身を寄せたとはいえ、小さな雫はどうしたって私の身体に当たる。
橋のたもとで待ち合わせなんてするんじゃなかった。
眦の水滴をぬぐいなら、私は後悔のため息をつく。

 

近くの、この橋が見える店に避難すればいいだけのこと。
ガラス越しに橋を見張れる店など、沢山隣接している。
先生もきっと、私がそうしていると考えて、店まで迎えに来てくれるかもしれない。
そう考える方が順当だ。
だけれど。

もし、カカシ先生が私に気付いてくれなかったら、どうしよう。

私が、もう帰ってしまったと思って、引き返してしまったら。
逆に、私がカカシ先生に気付かずに待たせてしまったら。
たまらなく嫌な感じがする。
こうして待たされている身の私がそんなことを思うのは、変かもしれないけれど。

 

夏のなごりの残る気温とはいえ、水に濡れた服は確実に私の体温を奪っていく。
少しでもぬくもりを逃したくなくて、両手で自分の身体を包む。
しっとりと肌に張り付いた生地の感触が気持ち悪い。

色とりどりの傘が私の前を通過した。
皆、私のことを不思議そうな目で見ていく。
中には、心配そうに声をかけてくれる人もいる。
私は「大丈夫です」と答える。

大丈夫。
私は大丈夫。
言い聞かせるように、呟く。
繰り返し。
寂しくて、沈んでしまいそうになる心を何とか叱咤して。

 

やがて現れた先生は、傘をさしていなかった。
私と同じように、濡れている。
カカシ先生が家を出る頃には、すでに雨は降り出していたはずなのに。
私の顔を見るなり、カカシ先生はこう言った。

「サクラは、雨が似合うね」

何を言われたのか、一瞬理解できなかった。
カカシ先生はにこやかな笑顔で続ける。

「濡れてる方が、色があって綺麗だ」

言いながら、嬉しそうに微笑むカカシ先生を、私は無言で見詰める。
開いた口がふさがらないというのは、こういうことだろうか。
違うでしょう。
あなたがまず最初に口にすべき言葉は、違うでしょう。
謝罪の言葉はどこへいったの。

 

呆れてしまって声も出ない私に、カカシ先生は無邪気な笑顔を返す。
たぶん、先ほどの言葉はカカシ先生の、心からの本音。

何だか、言い返すのも馬鹿らしくなって、私はそのままカカシ先生に飛びついた。
カカシ先生はいつものように、優しく優しく私を抱きしめてくれる。
何だか、凄くほっとした。
始終まとわりついていた不安は、すでに雨雲の彼方。

私はこんなにカカシ先生のことが好きなんだ。
気持ちを再確認してしまった。

 

私はカカシ先生が来ないのでは、という心配だけはしたことはない。
時間に遅れることがあっても、カカシ先生が約束を破ったことは一度もないから。
カカシ先生は、何があっても自分のもとへ帰ってくる。
それが分かっているから。
私は幸せな気持ちで、文句の一つも言えず、また、愛しい人が来るのを待つのだと思う。

いつまでも。


あとがき??
タイトルは言わずと知れた、
bonnie pink。(笑)
最近、彼女のアルバムをエンドレスでずっと聴いてる。
この話には、続きがあります。
カカシバージョン。アスマが出てくる。(予定)とことんバカップルを目指す話。
カカシ先生の方が結構マジかな。
早く書きたいと思うのですが。じ、時間がない。(泣)
書くと言ったら絶対書きますけれど。


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