LOVE


紅葉の季節、赤や黄、色とりどりの枯れ葉の絨毯の上をカカシは歩いていた。
かといって、彼は秋の風情と楽しむような情緒は持ち合わせていない。
単に町へと向かう道の途中に並木道があったにすぎなかった。

 

いつも通り愛読書を読みながら歩いていると、向こうから見知った顔が来るのが見える。
彼の元生徒である、サクラだ。
カカシが声を掛けるまでもなく、彼女の方からカカシに向かって歩み寄ってきた。

「カカシ先生、町に行くの?」
「そう。サクラは・・・」
カカシは一度目線を下げてサクラの服装を見てから、言葉を続ける。
「彼氏とデート?」
「そうよ」
よそ行きの格好をしたサクラは、微笑みながら言った。
「仲直りできたんだ」
「うん。カカシ先生のアドバイス通りにしたら、すぐにね。先生にはいつも相談にのってもらって、本当に感謝してる」
急に真顔になったサクラに、カカシは「よせよ」というように手を振る。
そしてサクラの頭に目をやったカカシは、ふと、あるものに気づいた。

「サクラ、髪に何かついてるよ。葉っぱかな」
「え、嘘!!取って、取って」
サクラはカカシの前まで来るとせかすように言う。
つむじ付近についた葉はサクラには見ることが出来ない。

どこから付けてきたのか、枯れ葉はサクラの髪にいい具合に絡まっていた。
注意して触れないと、粉々になってしまいそうだ。
「あれ、難しいな」
「ちょっと先生、しっかりしてよ」
「分かったから、じっとしてなって」
カカシがサクラの頭を引き寄せると、サクラは言われたとおりに動きを止めた。
呼吸すら停止しているのではないかと思われるその様子に、カカシは苦笑してサクラに向かう。

 

葉に集中していたカカシに、風の流れの変化か、サクラの髪の香りが鼻についた。
何気なく、そのままサクラの顔に目が移る。

サラサラの桜色の髪は肩にかかる程度。
長い睫に隠れた翡翠色の瞳は、今は伏せられている。
すべらかな頬は、思わず触れてみたくなるほどやわらかそうだ。
耳に見慣れないピアスをしているせいか、以前より大人びた雰囲気を纏っている。

こんなに綺麗な子だっただろうか。

会うたびに、どんどん変化していく気がする。
カカシは葉を片手にぼんやりと考えた。
昔は屈まなければ到底目線を会わせられなかった。
今は。

 

キスするのにちょうど良い高さかな。

 

そんな考えが浮かんだ矢先に、サクラがカカシの顔を覗き込んだ。
「取れた?」
カカシは慌ててサクラから手を離す。
「取れた取れた。ほら、さっさと行きな。彼氏が待ってるんだろ」
「うん」
カカシのそっけない物言いにも頓着せず、サクラは笑顔で頷いた。
「また、いつでも遊びにこいな」
「分かった。先生、またねー」
返事をするのと同時に、サクラは元気に走りだした。

 

手を振りながら遠ざかるサクラに応えながら、カカシは心に妙な寒々しさを感じる。
たぶん、これは気温とは関係のないことだ。
カカシは踵を返すのと同時に、その存在に気づく。
「見たぞー」
面白そうに笑いながら声をかけてきたのは、上忍仲間のアスマだ。

「元教え子といい雰囲気だったじゃないか。切なげに見送りなんかしやがって」
「そんなんじゃないよ」
カカシは苦笑いをすると当初の目的だった場所へと歩き始める。
「サクラにはちゃんと彼氏がいるし、俺にも彼女がいる」
「ふーん」
何故かカカシのあとをついて歩きながら、アスマは納得いかないような声を出す。
「サクラが彼氏と仲良くやってるのはいいことだしね。ただ・・・」

 

サクラが綺麗になった理由が、その彼氏の影響だと思うと、落ち着かない気分になる。
腹がたつというか。
この気持ちが何なのか、カカシにもよく分からない。

 

「ただ、何だよ」
言葉を止めたカカシに、アスマが怪訝な顔で追求する。
「んー。恋人じゃなくていいから、ずっとサクラの『特別』でいたいなぁ、なんて思ったりするんだ。何でも相談できるような、ね」
「・・・何だ、それ」
訳が分からないという顔をするアスマに、カカシはやわらかく微笑んだ。


あとがき??
ミスチルの『LOVE』をそのまんまカカサクにしました。(笑)好きなのよ。あの曲。
歌詞カード片手に書いた。微妙な曲なので、話的にも微妙。
まぁ、これも一つのLOVE、ということで。
曲の通りだと、サクラの彼氏は元野球部の人です。(アカデミーにそんなのあるのか?(笑))
やけにさらさらっと筆が進んで、短時間で完成してしまったあたり、やっぱり私はカカサク好きなのだと思った話。


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