真実の行方 1


相談したいことがある。

そういって呼び出されたのは、木ノ葉の忍がよく利用する飲み屋。
名の知れた小料理屋から暖簾分けした店なだけあって、料理の味は一級品だ。
小作りな店構えだが、定員の愛想もよく、活気が漲っている。

 

「で、何だよ。相談ごとって言うのは」

賑わう店内に不釣合いな、浮かない顔をしているカカシにアスマは問い掛ける。
「・・・ああ」
返事は返すものの、カカシはなかなか話し出そうとしない。
その深刻な表情から、よほどの事件があったのだと、アスマは察する。
一先ず、当り障りのない話題から入って、それから、その相談事とやらを聞き出そうとアスマは思った。

「カカシ、この間の“木ノ葉通信”見たか?」
「・・・見たけど」
「一面飾った中忍、馬鹿な奴だよなぁ」
「・・・・」
「アカデミーの教師だったらしいけど、自分の教え子にちょっかい出して、職を失うなんて。俺だったら、恥ずかしくて表歩けんよ」
ハハハッと笑って、アスマは傍らのカカシを見た。
とたんに、目を大きく見開く。

顔面蒼白のカカシ。
カカシの顔色がここまで変化したのを見たのは、初めてだ。
どんな任務のあとでも、疲れた表情ひとつ見せないカカシが。

「おい、どこか具合でも悪いのか。話は明日にした方が・・・」
「いいから!できるだけ早い方が」
カカシの勢いに呑まれ、アスマは僅かに頷く。

「発端は、ささいなことだったんだ」

 

 

「カカシ先生―。先生のところ、犬、いるよね。うちも飼ってるんだけど、今度犬を連れて先生の家に遊びに行って良い?」

年が明けて、初めての任務終了後。
サクラはカカシに駆け寄って訊いてきた。

「飼い犬っていうか、俺のは忍犬なんだけど・・・」
「どっちでもいいじゃない!うちの犬ね、最近お友達の犬が飼い主と一緒に引っ越しちゃって元気ないの。だから、先生のところの犬と遊ばせてあげたいんだけど」
サクラはカカシの服を掴んで、おねだりポーズだ。

可愛い生徒に頼まれ、カカシは無碍にも断れず、困ったような顔をした。
教師と生徒が仕事の場以外で親しくすることは、あまり良いこと事とみなされていない。
だが、たまには少しばかり羽目を外してもいいかとカカシは思った。

「んー。じゃあ、ナルト達も呼んで、うちで新年会開こう。その時に犬も連れておいで」
新年会という口実を作れば、周りもとやかく言わないとの考えだ。
「本当―!?じゃあ、私、ナルト達に伝えてくるわね!」
サクラは満面の笑みをカカシに向ける。
嬉しそうに飛び跳ねるサクラに、カカシは明るい笑顔を返した。

 

 

「・・・ほのぼのとした良い話じゃねーか」

どんな重大事件かと聞き耳を立てていたアスマは、拍子抜けしたように言う。

「続きがあるんだよ。それで、新年会をやったわけだけど、ナルトの奴がどっから探してきたのか酒なんて持ち出してきてな。いつの間にやら酒盛りになっちまった」
「おいおい。まさか生徒に飲ませたのか」
「俺だって、止めたよ。もちろん!」
カカシは鼻息を荒くして主張する。
「でもなぁ、正月だし、まぁ、ちょっとくらい良いかなぁ、なんて思って」
「ふーん、で?」
「それで、空きっ腹に酒を飲んだのがいけなかったのが、悪酔いしちゃったみたいなんだよ。気付いたら朝だったからよく分からないんだけど」
「ふんふん」
「朝、ベッドで目覚めたら凄い二日酔いで頭は痛いし、部屋を見回したら、いかにも宴会後って感じで散らかってるし、あいつら片付けないで帰りやがったな、と思った」
「ふんふん」
「それでも、俺以外に片付ける奴なんていないわけだから、頭痛を抱えながらもしょうがなくベッドから出ようとした。そして、気付いた・・・」

カカシはふいに口をつぐむ。
何となく嫌な予感がした。
それでも、アスマは訊ねないわけにいかなかった。
「何に?」

「・・・サクラが隣りで寝てた」
カカシは額に手を置きながら続ける。
「しかもお互い、服、着てなかった」

 

 

下着姿のサクラに、カカシが腰を抜かすほど仰天したのは、言うまでもない。
声もなく硬直すること30分。
やがて目を覚ましたサクラは、カカシと目が合うと恥ずかしそうに頬を染めた。
その反応が、どうにも解せない。
今までのサクラだったら、大騒ぎして悲鳴をあげていたことだろう。

「帰るね」

服を身につけると、サクラは連れてきた犬を小脇に抱えてあっさりと出て行った。
カカシが言葉をかける暇もなく。

 

 

「ど、どう思う?」
「どうって・・・・」
真剣な目で問い掛けるカカシに、アスマは曖昧に答える。
状況を聞いた限りでは、何もなかった、という方が変に思える。
だけれど、カカシを前にそれを言うのは、少々ためらわれた。

「それから、サクラの様子はどうなんだ」
「気まずいよ!このうえなく!!必要最低限の会話しかしないし、サクラ、俺と目合わせようとしないし。ナルト達に訊いても、途中で帰ったから分からないって言うし!」
カカシは拳を強く握り締める。
「だから思い切って訊いてみたんだ・・・」

 

 

任務終了後、ナルトとサスケの姿がなくなるのを見計らって、サクラを呼び止める。

「あ、あのさ、新年会のときのことなんだけど」
「・・・うん」
サクラは恥ずかしそうに俯いている。
カカシは言い難そうにサクラに問い掛けた。

「俺、サクラに何か、した?」

サクラは弾かれたように顔をあげる。
「覚えてないの!!」
「・・・・」
カカシは無言の返事を返す。
視線をそらして頬をかくカカシを、サクラは目を皿のようにして見詰めつづける。
そのうちに、サクラの瞳から大粒の涙がこぼれ出した。

「私、初めてだったのに!」

涙ながらに言うと、サクラは踵を返して走り去った。
カカシはというと。
サクラの言葉のあまりの衝撃に、彼女を追いかけることが出来なかった。

 

 

「そうこうするうちに、“木ノ葉通信”にあんな記事が出るし、俺、もう生きた心地がしなくて」

さめざめと泣くカカシに、アスマはかける言葉もない。
ただ、優しくカカシの肩を叩く。
そして、「飲むか?」というように、酒の入ったグラスをカカシに差し出した。

「もう酒は飲まない!」

カカシはグラスを睨むと、涙声で言った。


あとがき??
7班総出演のつもりだったけど、無理だった。
正月早々、アホな話ですみません。(^_^;)
ロリとエロがテーマですけど、基本はギャグなんで。ギャグ。(強調)
笑って許して。(というか、笑ってくれなきゃ泣いちゃうよ、私)

うちのカカシ先生、酒に弱かったらしい。
次は、カカシ先生がさらに窮地に陥ります。(笑)
大事件発生。そして、カカシ先生に向けられる疑惑の目。
カカシ先生は犯罪者のレッテルを張られてしまうのか!!
果たして、真実の行方は!?
こう御期待!(?)


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