幸せのカテゴリー U
卑怯な計略と強引な手段を使って、サクラを手に入れた。
後先のことなんて考えられなかった。
彼女には別に好きな奴がいたし。
嫌だったから。
サクラが誰か他の人のものになってしまうのが。
それでも、奇跡的に、サクラは俺を慕ってくれた。
十分に愛情を注いでくれた。
これで満足できるはずだった。なのに。
俺は心に、新たな不安を抱えてしまった。
俺の目にしか見えない、過去の亡霊達。
この手で葬った、彷徨う霊魂。昼夜問わず、毎日のように現れては、俺を翻弄する。
自分が少しでも喜びを感じたときに。
俺には、そんな資格はないのだと。
早く自分達と同じ場所に落ちてくるようにと。
決まって、耳に囁きかける。暗部にいた頃には、これほど鮮明に聞こえなかった。
自分が幸せだと、思える時間がなかったから。
でも、今は違う。
サクラが俺に笑顔を向けてくれるたびに、胸が痛いほど締め付けられて。
涙が出そうになる。
目の眩むような幸福に。
この穏やかな日常が、到底、自分のものとは思えなくて。
どれほど大切にしようとも、離れていくものはこの世にある。
サクラが例外ではないと、どうして言い切れよう。
サクラの心変わり。
サクラの死。
理由はいくらだって考えられた。ここまでサクラに心を奪われると分かっていたら。
初めから手を出さなかったのに。最初から手に入らなければ、不安にならずにすんだ。
もうサクラを手放すことなど。
以前のように、一人になることなど。
考えられない。
「先生、何か心配ごとでもあるの?」
自分の不安は彼女にも伝染している。
彼女には寂しげに見えるらしい自分。
違う。
俺は怖いだけなんだ。
君を失うことが。サクラには見えない、暗い闇。
サクラには分からない。
神々しいまでの生命の輝きを持つ彼女には分からない。サクラが永遠に自分のものだという保証があれば安心できるのに。
今日も、不相応な俺に幸せに、哀れな亡者どもが難癖をつけてくる。
サクラが存在するかぎり。
彼女が俺の手の内にあるかぎり。
この不安は一生消えない。幸せで幸せで。
少しだけ不幸な自分。
あとがき??
分かりませんねー。私にも分からないですから。
タイトルは「カカシ先生は心配性」にした方が良かったか・・・。
カカシ先生、ちょーっと、フェリックスくん入ってます。
(橘香いくの先生の『有閑探偵コラリーとフェリックスの大冒険』より)