好き


好きな人がいる。

 

サクラが言った。
そんなことは、とうに承知している。
サクラが同じ班の少年をアカデミーのときから追いかけているのは周知のことだ。

でも、サクラは違うのだと否定した。
もっと、もっと好きな人ができたのだそうだ。

どうして、そういうことになったのか、よく分からないのだが。
俺はサクラの恋の相談役を買って出ることになってしまった。
たぶん、気になっていたからだと思う。

サクラのこと。

それ以上に。
サクラの好きな人、とやらが。

 

 

サクラの想い人。

サクラは相手の名前を明かそうとはしない。
ただ、ものすごく鈍い人なのだとサクラは言う。
サクラは何とかして、自分の気持ちに気付いてもらいたいらしい。

俺はオーソドックスにプレゼント攻撃をしたらどうかと提案した。
彼が甘い物が好きならお菓子、嫌いなら、別に好みそうな食べ物を。
名づけて、餌付け作戦。

サクラはすぐに話にのってきた。
先生は甘い物が好きかと訊ねてきたので、好きだと答えておいた。

サクラの話は脈略がない。

 

 

次の日、サクラは勇んで手作りケーキを持ってきた。

家に帰ってから、本を見ながら頑張って作ったという。
味は、洋菓子店に並んでいてもおかしくないほど、美味かった。
多少、贔屓の入った意見だとは思うが。

そういうわけで、自分は味見役に適さないと忠告すると、サクラは何故か不機嫌になった。
そして、プレゼントが効果なしだった場合は、どうすればいいのかと問うてきた。
それほど鈍い相手なら、ストレートに好きだと告白するしかないと俺は言った。

好き。
直後にサクラの口から飛び出した言葉。
俺に言ってどうするんだと訝ると、サクラはさらに機嫌が悪くなってしまった。

サクラの行動は脈略がない。

 

 

一連の出来事を、二人の上忍仲間にもらす。

全く、あの年頃の女の子は何を考えているか分からないと。
すると、彼らは顔を見合わせて奇妙な表情をした。
馬鹿。
仲間の一人が妄言を吐く。

俺が怒って反論しようとすると、残る一人も、同意見だと述べた。
訳が分からない。
どうして自分が馬鹿呼ばわりをされなければならないのか。

また、仲間は自分にサクラのことをどう思ってるのか訊いてきた。
俺は、彼女のことが好きだから、相手の男と上手くいかなければいい、と正直に答えた。

 

そのとき仲間達が見せた爆笑の意味を、俺は数日後にようやく理解することができた。


あとがき??
構想&執筆時間、10分。(笑)楽しかったですよ。にぶにぶカカシ先生。
結局、うまくいったみたいですね。良かった良かった。
読んで幸せになれる話を書こうと思ったら、書いて幸せになる話になってしまった。幸せ幸せ。


駄文に戻る