baby baby ⅰ
カカシが家に帰ると、玄関の前に大きなバスケットが置かれていた。
暗部出身という、すねに傷を持つ身。
まさか爆弾じゃないだろうなぁ、と思いつつ、カカシはそろそろとバスケットに近づいた。
あるいは、爆弾の方がまだ彼にとって救いだったかもしれない。
バスケットの中身を覗き込んだカカシは硬直し、たっぷり３０秒は身動きできずに立ちつくした。生後間もない赤子。
それが、バスケットの中ですやすやと寝息を立てていた。「えーと・・・・」
額に手をやり、カカシは何とか状況を整理しようとする。
見知らぬ赤子が、どうしてこの場所に放置されているのか。
パニック状態の頭で赤子を眺めているうちに、カカシはバスケットの中に置かれた封筒に気が付いた。
赤子に触れないよう注意して取り上げ、目を通す。『あなたの子です。大切に育ててください』
柔らかい女文字で書かれている手紙。
このときになって、カカシの混乱は頂点に達する。
計算上、この赤子が出来たであろう時期には自分は里を離れていた。
よって、まるで身に覚えがない。
「先生？」
背後からかけられた声に、カカシの顔からは一気に血の気が引いた。
非常にまずい情況に陥っている事を、改めて感じる瞬間だ。びくつきながら振り返ると、案の定、その日来訪予定だったサクラが立っていた。
「何してるの。こんなところで」
「サクラ、あの、今日ちょっと用事が出来たからこのまま帰っ・・・」
「何言ってるのよ」
カカシがそれ以上来るな、という手振りをしても、サクラは笑って取り合わない。
すたすたとカカシに近づくと、サクラは素早く手元の便箋を奪い取った。
「これ、何？」
「さ、サクラ！」便箋を一目見るなり、サクラの顔がサッとこわばる。
何しろ便箋にはたった二行の文章しか書かれていないのだ。
これ以上読みやすい手紙は無い。
「・・・・先生」
ゆっくりと顔をあげ、サクラはカカシと玄関の前のバスケットを交互に眺める。
蒼白状態のカカシは、ごくりと唾を飲み込んだ。やがて手が震えだしたかと思うと、サクラの瞳から大粒の涙がこぼれ始める。
「いつかは、いつかはこんな日が来るんじゃないかと思っていたわ・・・・・」
消え入りそうな声で呟き、サクラは真っ青な顔で足をふらつかせる。
「おい、ちょっと。人の話を」
焦ったカカシが声をかけるものの、サクラの耳にはまるで入っていなかった。
「ひどいーー！！先生が子持ちだったなんて！私、遊ばれてたのね！！」
泣き崩れたサクラは大声でわめき散らす。
そのうち、近所の住人が何事かと顔を出してきた。
「サクラ、取り合えずうちに入ろう。なっ」
「離して！不潔よー！！」
人目を気にしたカカシは何とかサクラをなだめようとするが、サクラは取り合おうとしない。暴れるサクラに呼応し、バスケットの赤子も火がついたように泣き出した。
二人の子供の重奏に、カカシは軽い眩暈を覚える。
気付くと、いつの間にやら増えたギャラリーが二人と赤子を囲んでいた。「かんべんしてくれ・・・」
好奇に満ちた視線が集中する中、カカシは頭を抱えてその場にしゃがみ込んだ。
あとがき？？
・・・・すみません。コメント（言い訳）は最後に書きます。
ほのぼののつもりが、ギャグに・・・。
赤子を登場させればほのぼのになると思った私が浅はかだった。
さ、最後はほのぼの、になる、はず。『あねさんは委員長』を読んだことがある人は、続く展開も分かると思います。
指定が“７班”なので、次はナルトとサスケくんも出てきますよ。
ああ、めちゃめちゃ分かりにくいですが、先生とサクラはお付き合いをしているらしいです。・・・なんか、えらい楽しい。
ピンチのカカシ先生って、書くの好きなのかも。