ボブ!


やんごとなき理由により、髪を切った。
理由は非常に面白くないものだったけれど、結果的には良かったのだと思う。
それは、初恋の人のために伸ばしていたものだったから。

本来、私は活動的な短い髪の方が好みだ。
よって、幼い頃はずっとショートだった。
人間、やっぱり無理はよくない。
相手の好みで伸ばすの、切るのと騒ぐより、短い髪の自分をそのまま好きでいていてくれる人と付き合う方が楽だ。
大体、長い髪は洗うのも手入れも大変だし、朝ははね具合を気にしなければならないしで、とても気を使う。
これで、せいせいしたわ。

と。思っていたのに。

 

「サクラ。先生、髪が長い方がいいな」

その言葉に、つい「あんたもかよ」と思ってしまったことを否めない。
「・・・ふぅん」
気のないふりをしながら、心の内では緊張する。
続く言葉が、嫌でも分かったから。

「伸ばそうよ」
「嫌よ」
「なんでー」
大人げなく頬を膨らませる先生に、私は逆に質問をする。
「先生は、髪の短い私と、髪の長い他の美人とどっちが好き?」
「サクラ」
即答した先生に、私は勝ち誇ったように笑う。
「なら、いいじゃない」

下忍相手に言い負かされて、先生はしょぼくれていた。
彼に惚れている身として、それはあんまり見たくない姿だった。

 

先生と別れてすぐ、私は気晴らしに街へと足を向ける。

「あれ、サクラ。今日美容院に行くって言ってなかった?」
通りすがりのいのが、私を見て意外そうな顔をする。

そうよ。
そのとおりよ。
いのが切り揃えてくれたとはいえ、まだ不揃いな部分の多い髪をばっさりとやろうと思ったのよ。
ばっさりと。
そのつもりで、雑誌で美容院を選んで、予約までしたのよ。

でも、やめた。

 

私は、髪の短い自分よりも、カカシ先生のことが好きだ。

本当は、どんな髪型をしていても、先生がそんなことで私を嫌いになったりしないのを知っている。
だけど、嬉しかったから。
私の問いに、先生が迷うことなく自分の方を選んでくれたのが。
先生が長い髪にこだわるようなら、頭にきて一気にばっさりといっていた。

これは先生の作戦勝ちかもしれない。
知っていてやっているなら、よほどの策士だ。
先生のことだから、その可能性も否定できなかった。

 

必要のなくなった雑誌の“お薦め美容師特集”を、恨めしく眺める。

先生が、髪の短い子が好みだと言い出すのは、一体いつのことだろう。


あとがき??
息抜き作品。何にも考えてないですな。
男性は長い髪の娘が好きーって人が多いのかと思いまして。一概には言えないのか。
サクラはショートボブの方がいいと思います。いのも。
タイトルはサクラの悲痛な叫び。(笑)


駄文に戻る