after school 2


カカシ先生は私の担任の先生で。
私はその先生の家に遊びに来ているわけで。
つまり、この家の中で私達は二人きりという情況なわけで。

混乱する頭が必死に今の情況を整理しようと努める。
だけれど、私の考えはちっともまとまってくれなかった。
だって、私は今、カカシ先生にキスをされている。
何の前触れもなく。
目を見開いて馬鹿みたいに呆然としていた私は、先生の手が私の胸に移動したことで、ようやく我に返る。

もしかして。
いや、もしかしなくても。
これはヤバイんじゃないだろうか。

そう思うのと同時に、身体が動いていた。

この細腕で、それほど強い力が出るはずがない。
でも、私が腕を突き出すと、カカシ先生は簡単に私から退いた。
そして私の眼前には、ひどく悲しげな顔をしたカカシ先生。
今まで見たことも無いその表情に、私は激しく動揺する。

「・・・ごめん」

思わず謝りそうになった私だけど、カカシ先生が一呼吸早く謝罪する。
その後、質問する隙すら与えられず、半ば追い出されるようにして私は先生の家をあとにした。

 

 

何だったんだろう、あれは。

家路を歩く道すがら、何度考えても分からない。
唐突にファーストキスを奪われた事実に、私は怒りよりも驚きの方が先行して声が出なかった。
今でも、まだ驚きは続いている。

どうしてカカシ先生はあんな行動を取ったのか。
毎日カカシ先生の家に遊びに行っていて、今日だけ違ったことといえば、あの彼女の存在。
彼女と喧嘩したことと関係あるのだろうか。
そうだとしても、そんなことは私とは無関係のはずだ。

泣きそうだったカカシ先生の顔が目の前をちらつく。
何度考えても、腑に落ちない事件だった。

 

 

 

「先生、いるんでしょ!出てきなさいよ!!」
私はガンッとカカシ先生の家の扉を蹴り上げた。
「何で私が先生に無視されなきゃならないのよ!理由を言いなさいよ、理由を」
憤りのあまり、血管が切れそうだ。

あれから、任務で幾度も顔を合わせたけれど、カカシ先生は私と必要以上に接触することを避けた。
あからさまに。
温厚な私といえど、そんな状態が一週間も続けばいいかげん堪忍袋の緒がぶち切れる。
思い立ったが吉日とばかりに、私はカカシ先生の家に押しかけたのだ。
このままもやもやした思いを抱えていても、気分が悪い。

うんともすんとも言わない中の住人に、私は大きく息を吸い込み、深呼吸する。
「こっちには奥の手があるんだからね。先生に貸してもらった鍵、まだ持ってるんだから!!入るわよ!」
だけれど、私が鍵を使うよりも早く、扉は開かれた。
僅かな隙間から、カカシ先生の顔が覗く。

「あのさ、サクラ・・・」
小声で喋る先生に合わせて、自然と扉に顔が近づく。
「俺のこと怖くないの?」
「何がよ」
「だって、無理にあんなことしたし・・・」
「私がカカシ先生のこと怖いと思うはずがないじゃないのよ。それより、中に入れてよ!」
私の言葉に安心したのか、カカシ先生は少しだけ頬を緩める。
そして、扉を開けて私を家に入れてくれた。

 

取り敢えず差し向かいに座ったものの、会話は遅々として進まなかった。

「あのな、サクラ。俺、自分の家の鍵を他人に渡したのって、サクラが初めてなの。この家に入ったことがあるのも、サクラだけ」
一応相槌を打っている私に、カカシ先生が念を押す。
「言ってる意味、分かる?」
「分かんない」
私はきっぱりと言う。
「え、何。先生、友達が少ないの?」

心配して声をかける私に、カカシ先生はがっくりと肩を落とした。
私、よほどとんちんかんなことを口にしたのだろうか。
こんなに気落ちしたカカシ先生は初めて見る。

「サクラのことが好きなんだよ」
観念したように、カカシ先生は単刀直入に話を切り出した。
「・・・・え?」
「だから、俺はサクラにあーゆーことをしたいとずっと思ってたの!それなのにサクラは人の気も知らないで俺の家に来て、くつろいでぐーすか居眠りとかしちゃうし。元カノが来ても全然嫉妬してくれないしで、凄くむかついたんだよ」
飲み込み悪く聞き返した私に、カカシ先生はやたら詳しく説明してくれた。
おかげで、カカシ先生のキスの意味を、私はようやく理解することができた。
とはいえ、頭はパニック状態だ。

「そ、そんなの・・・」
混乱する私は、何とか声を絞り出す。
「言ってくれないと分からない、わよ」

 

先生は私より全然年上の人だし。
先生だし。
恋愛の範疇になかった。
先生の話を飲み込んだのと同時に、キスしたことが思い出されて・・・。

嫌だ。
急に顔が火照ってきたわ。

「サクラは?」
「ええ!?」
「俺のことどう思ってるの。やっぱり先生としか見れない?」
何だか、そんなに見詰められると、よけいに緊張しちゃうんだけど。
目をそらしたまま、私は思いついたままに声を出す。
「じ、譲歩してみる」

カカシ先生の家が居心地がいいのは、本当だし。
先生にキスされたときも、驚いたけど、嫌じゃなかった。

「本当?」
「うひゃー!!」
喜びの声と共に私の肩を抱いた先生に、私は悲鳴をあげる。
「何だよ。急に」
「いや、な、何だか意識しちゃって」
額に汗しながら、私はさりげなく先生から距離を取る。

「先生、今度からはちゃんと言ってからにしてよね」
「何が?」
「・・・キ、キスとか」
次の瞬間、カカシ先生は唐突に吹き出した。
「わざわざ確認取らなきゃいけないの」
先生が何だか面白そうに笑うものだから、私も合わせて笑っておいた。
そんな明るい笑顔を見せるカカシ先生は久々だったから、嬉しかったのかもしれない。

 

本音を言うと。
私の一言にいろんな顔を見せてくるカカシ先生を、可愛いとか思っちゃったんだ。
可笑しいよね。
いい大人なはずなのに。
私のことで、そんなに一喜一憂しているなんて。


あとがき??
少女漫画になっている、のか??
目指していたんですけど・・・・。(汗)
小野塚カホリ先生の漫画を読んでて思いついた話。脈略ないけど。
カラオケボックスでキスしてる場面を見て。(←それで、驚いた女の子がやるときは言ってくれと注意(?)するのだ)

先生と一緒に笑っちゃうサクラが、なんだか良い。


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