愛は勝つ 2


大会の出場者は上忍から下忍まで、様々な人間が選抜されている。
よって、階級による不利が出ぬように配慮された数々の試験が行われた。
知力、体力、運。
全てを必要とする試験でトップの座に輝いたのは、意外にもカカシといのの二人だった。

「よー頑張るね、君も」
「あんたには負けないわよ!」
現在同点の二人は中間発表の行われた壇上でもにらみ合いをしている。
二人の気迫(と脅し)に他の出場者達が萎縮してしまった部分はかなりあった。

「では、最後に投票によってサクラちゃんの旦那様を決めたいと思います。皆さん、ふさわしいと思う人の名前を書いて投票箱に入れてくださいー。総投票数がそのまま点数にプラスされるので、大逆転もありえますーー」

観客に一枚一枚投票用紙が配られ、大会は一時休憩に入る。

 

 

ざわざわと騒がしい会場内を横切り、空席を見つけたカカシはおもむろに座り込んだ。

人ごみに目をやり、カカシは大きく息を吐く。
どう考えても面白半分の野次馬が多すぎだ。
好奇の目に晒されることに、カカシはどうにも慣れない。
今も何人かの人間がちらちらと視線を向けているが、はたして、どれほどの人間が自分に票を入れてくれるのか全く分からない。
日頃から人当たりを良くしておけば良かったかと、今さらながらに考えたりする。

「頑張ってますね、旦那様」
いつの間にかカカシの傍らに歩み寄ったサクラが笑いながら話しかける。
「・・・景品が話しかけていいの」
「休憩時間だもの」
言いながら、サクラはカカシの隣りに腰掛ける。

「先生が何かに熱中する姿なんて久々に見ちゃった」
サクラはさも意外だという顔でカカシを見た。
常に飄々とした態度を崩さないカカシが、自分のためとはいえここまで懸命になるとはサクラは正直思わなかったのだ。
「・・・だって、譲れないだろ」
憮然とした面持ちのカカシに、サクラは口端を緩める。

「後半もしっかりね」
サクラはカカシの肩を叩いて貴賓席へと戻っていく。
それでも、当然とはいえ応援はされていること知って、カカシは妙に落ち着いた心持ちになっていた。

 

 

ほどなく後半戦が始まり、開票結果が発表される。

「えー、堂々の一位は・・・」

会場内の人間は皆つばを飲み込んでマイク越しのナルトの声に聞き入る。

「イルカ先生です」

「ええええーー!!!」
出場者のみならず、のんきにジュースを飲みながら観戦していたイルカもVIP席(ナルトが用意した席)で大声をあげる。
「お、俺はエントリーしてないぞ!」
「でも、イルカ先生、ダントツトップだよ。「真面目で誠実そうだから」「優しくて面倒見がいいから」等々」
ナルトはイルカに向かって里の人々が書いた投票理由の欄を読み上げる。
「違反だろー、それは」
ナルトの隣りでカカシは必死に抗議をする。

「火影さま、どうする?」
ナルトは大会委員長である火影に指示を仰ぐ。
その問い掛けに、火影は重々しく頷いてナルトに合図した。
「許可するそうです」
「そんな馬鹿な!!!」
カカシの頭をかかえて嘆いたが、里の長である火影の言葉はけして覆されない。
「・・・・イルカ先生の方がまだマシか」
カカシを見ながら、いのはぶつぶつと独り言を言っている。

 

よく分からないうちに周りの人間に押されたイルカは、ついにお立ち台に上げられてしまった。
「ちょ、ちょっと。困りますってば!」
イルカはどうしたらいいか分からずにあたふたとするしかない。
観客席からは早くも「おめでとうー」等といった掛け声が出ている。

「イルカ先生が一位なんだー」
その声に目を遣ると、サクラはまんざらでもなさそうな顔でイルカを見詰めていた。
髪を結い上げ、薄化粧をしたサクラは“木ノ葉小町”の名の通りの美少女だ。
イルカの気持ちが多少ぐらついたのも否めない。
思わず顔を赤らめたイルカだったが、その殺気に気付くと瞬時に表情を凍り付かせた。
「じ、辞退します」
確認することも恐ろしく、イルカはその人がいる方角を振り向くことなくナルトに申し出る。

 

「困ったなー。イルカ先生以外は見事に票がばらけてるんだよね」

当惑するナルトに、イルカはそっと提言する。
「あのさ、もうやめにしないか」
「え?」
「ずっと言おうと思ってたんだけど、こんな大会開くのは間違ってる。みんな興味本位で面白がってるだけだし、サクラのためにもならないよ」
イルカは貴賓席にいるサクラを振り仰ぐ。
「サクラはどう思う?本当は嫌なんだろ」

話を振られ、サクラは初めて戸惑った顔を見せる。

「・・・・カカシ先生と結婚するって言ったとき、みんながみんな考え直せって言うからちょっと不安になっちゃったんだ」
一度言葉を切ると、サクラは会場の人々を見回し訥々と喋り始めた。
「せっかくのお祝い事なのに誰にも賛同してもらえないなんて、寂しいし。変な大会だと思ったけど、これでみんなが少しでも納得してくれたらいいと思って・・・」
サクラの言葉に、会場は一遍にしんとなる。
中でもいのはショックを隠しきれずに沈んだ顔つきになっていた。
サクラに結婚の話を聞いたとき、真っ先に反対したのを思い出したからだ。

「ごめんなさい。サクラの気持ちも考えないで・・・」
いのはサクラに向き直ると、サクラの手を取りしっかりと握りしめる。
「おめでとう」
一番の親友にやっと望んでいた言葉をもらい、サクラはにっこりと微笑んだ。

 

 

「先生、ごめんね。面倒くさいこと大嫌いなのに、無理に参加させちゃって」
「・・・いや」
里の人々に祝福の言葉をもらい、二人は幸せ一杯の気持ちだ。
いろいろと大変だったけれど、カカシも今夜からは安心して眠れることだろう。

「結婚式の前にサクラの綺麗なウェディングドレス姿が見れたから満足だよ」
「そう?」
サクラは苦笑気味にカカシを見上げる。
小首を傾げたその姿が白いドレスと相俟って、さらなる愛らしさを醸し出していた。
その身を抱こうとしたカカシだが、サクラは無意識にかその手をかわす。
「ナルトにお礼言ってこなきゃ。いろいろ心配してくれて、今回のセッティングも全部引き受けてくれたのよ」
言い終えないうちに、サクラは会場内の椅子の片づけをしているナルトに向かって元気に駆け出した。

 

一件落着してホッと息を付いたカカシだが、サクラが相談をする相手が自分ではなくナルトだったということが、どうにも気になる。
サクラとナルトの姿を見詰め、一抹の不安を覚えるカカシだった。


あとがき??
カカシ先生が本妻で、ナルトが二号。いいなぁ、いいなぁ、いいなぁ・・・。(エンドレス)
でも、ナルトの言葉はもちろん冗談ですよ。彼は純粋にサクラの幸せを願う人なのです。いい奴。(涙)
ちなみに、試験内容はパン食い競争とか大玉ころがしとか、そのへん。(体育祭のノリだわ)
さらに余談だと、将来サクラの娘はナルトと結婚するんですよ。(my設定。この話も書いてないな)

 

 カカサクの結婚式どたばた話。
・ サクラがカカシのものになる最後のあがきにサクラスキー達がカカシを襲おうとするような感じ。
・ カカシVSいのが入る。

が、リクエストだったのですが、クリアしてますでしょうか。(^_^;)
結婚式というか、式直前なのですが。
すみません。途中からリクを忘れてすっかり暴走して書いてました。楽しかったです。

36700HIT、かいん様、有難うございました。


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