My Dear Piglet ⅱ
数日後、男はその後の経過を聞きにカカシの前に現れた。
「どーだった。彼女、喜んでくれたか？」
喜々とした顔で訊ねる男に、カカシは無言でその箱を渡す。
中のペンダントは手つかずでそのままだ。
「あれ、渡さなかったのか」
訝しげな顔をする男に、カカシは暗い声で答える。
「泣かれた」
「え？」
「そんなものいらないって・・・・」サクラの涙はなまじ頭を殴られるよりも強い衝撃だった。
女性にプレゼントをしたことは数え切れないほどある。
だが、今まで付き合った女性は高価なプレゼントを喜ぶことはあっても、サクラのように入手した経緯を問うことはなかった。
泣かれたことも、もちろん皆無だ。
サクラがどうして泣いたのか、カカシにはよく理解できない。
確かなのは、サクラが泣くのは嫌だということだけだ。「だから、もうお前の仕事は手伝わない」
「・・・そうか」
迷うことなく言い切ったカカシに、男は少し残念そうな顔をして箱を胸ポケットへと押し込む。
だが、彼はすぐに表情を和らげてカカシを見遣った。
「本当にいい子なんだな」
「？」
意味が分からず怪訝な顔をするカカシに、男はくすりと笑う。
「その彼女さ」
「ああ」
自分が先日言った言葉を思い出し、カカシは小さく頷いた。
「そうだな。俺にはもったいないよ・・・」
ペンダントは返してしまったが、サクラの誕生日に何かプレゼントしないわけにはいかない。
カカシはいろいろと模索しながら町中を歩いていた。
何か高価な物をあげても、サクラはまた受け取ってくれないだろう。
かといって、サクラの年齢の女子が何を欲しがっているのかは全く分からない。「あ、これ可愛いーｖ」
カカシは耳に付いたその少女の声に振り返った。
見ると、数人の少女が露店の前に集まって品を物色している。
彼女達の年はちょうどサクラと同じくらいか。
カカシは彼女達の後ろからそっと店の中を覗いてみる。
細々とした小物やアクセサリーが並んでいたが、カカシにはその善し悪しはさっぱりだった。
いよいよサクラの誕生日当日、電話で呼び出すとサクラはすぐにやってきた。
だが、まだあのペンダントの件を引きずっているのか表情は硬い。「誕生日プレゼントだよ」
差し出された物に、サクラは一層顔をこわばらせる。
「先生、私・・・」
「いいから、開けてみてよ」
カカシは有無を言わさずその包みをサクラに押しつける。
強引なカカシに戸惑いながらも、サクラはカカシに促されるままに包みを開いていく。「・・・・何、これ」
「可愛いだろーｖ」
ピンクの子豚の形をした小さなぬいぐるみを、サクラは自分の目の近くまで持ってくる。
まるまると太った子豚はつぶらな瞳がキュートで、腹を押すと「キュー」と音をたてた。
これを可愛いと言い切るカカシのセンスに、サクラは思わず吹き出した。
「変なのー」
明るく笑うサクラに、カカシも顔を綻ばせる。
「いろいろ迷ったんだけど、それがサクラに似てるなぁと思って」
その一言に、サクラの笑顔が固まった。「先生、ひどい！」
とたんに頬を膨らませたサクラに、カカシは笑い声をたてる。
「ほら、そっくりじゃないか」
「もー！！」
サクラはぽかぽかとカカシの身体を叩くが、カカシの笑いは止まらない。
面白くなさそうな顔をしたサクラはそのままカカシの身体に抱きついた。サクラはカカシの背に腕を回して呟く。
「先生、有難うね」
その声は喜びに満ちたもので、カカシは安堵の微笑を浮かべる。
サクラを抱きしめながら、カカシはサクラのことを前よりもずっといとおしく感じていた。
あとがき？？
プレゼントは金額よりも気持ち、か？？
タイトルはこっこの歌のもじり。本当はPigletじゃなくて Pig。Pigletってくまのプーさんのお友達の名前だわ。
あの曲、可愛くて残酷で好きです。しかし、この話の内容とは全く関係ありません。
旅先の電車の中でぼへーっと考えてた話。時間が沢山あったの。
私の駄文らしく、うすらくさいところが何だかあれですね。うーん・・・。カカシ先生は卑屈なのでサクラがどれだけカカシ先生のことを大事に思ってるかよく分かっていないようです。
たぶん、一生分からないでしょう。
自分以外の人を選んだ方がサクラは幸せになれるんだろうなぁと思っているのに、もう手を離せなくなってしまっている。
・・・・結構マジだな。