地球の王様 1


「あなたの願いを叶えましょう」

壺から出てきた精霊が言いました。
「私は壺の精霊です。何でも望みのままですよ。さあ、地位か名誉か、お金か美女か」
幼い頃、童話で読んだランプの魔人さながらの情景に、少年は唖然としました。
だけれど、これは夢幻ではなく、現実の出来事。
精霊は少年の足元に畏まり、彼の答えを待っています。

少女の姿をした精霊を前に、少年はきっぱりと言いました。

「何もいらない。欲しいものは自分で手に入れる」

 

 

 

「・・・俺はその子が誰かって訊いたんだよ」
「だから答えただろうが」
「そんな与太話、信じると思ってるのか!!」
「事実だから仕方が無いだろう!!!俺が願いごとを言うまで帰らないって言い張って、困っているんだ」

怒鳴り声をあげるカカシに負けじと、サスケも声を張り上げる。
サスケの左腕には、異国の衣装を身に纏った少女がべったりと張り付いていた。
忍びの里で、そのエキゾチックな服は異様に目立っている。

「お前、任務のときに彼女連れてくるなよ。見かけないけど、どこの子?」
という、カカシの質問に、サスケは正直に彼女の正体を話したのだ。
だが、彼女が古道具屋で買った壷の中から出てきたと言っても、カカシはまるで信じない。
「へぇ。壷の中からねぇ」
なとど言って納得しているのは、ナルトだけだ。
道すがら、何人もの知り合いに声をかけられ、サスケは同じ答えを繰り返したのだが、やはりカカシと同じような反応だった。

 

「ちょっと、あなた。私のご主人様をいじめないでよ!」
ピンクの髪の少女はいきり立った様子でカカシを睨む。
「・・・ご主人様?」
「それ、やめろって言っただろ!!」
サスケは慌てて少女を制する。
だが、カカシはにんまりと笑ってサスケを見た。
「彼女にそんな風に呼ばせてるなんて、お前、そういう趣味があったんだ。見かけによらないねぇ」
何を勘違いしているか知らないが、カカシはひどく嬉しそうだ。

「名前で呼べ、名前で!敬語もやめろ」
「・・・じゃあ、サスケくん」
少女は、しぶしぶサスケの言うとおりにする。
主人をそのまま名で呼ぶことは抵抗があるため、せめて「くん」付けだ。

 

「ねぇ。君は何て名前なの?」
興味津々といった様子で訊ねるナルトに、少女は目を瞬かせる。
「・・・そんなものはないです。ただ壷の精霊と」
「それじゃ不便じゃん」
「サスケが付けてあげたら」
信じていないと言ったわりに、カカシも会話に混じってくる。
期待を込めた瞳で見詰めてくる少女に、サスケは眉を寄せて考え込む。

「・・・サクラ」
少女の髪を見ながら言うサスケに、カカシは嘆息しながら首を振った。
「単純だねぇ」
「本当」
「じゃあ、お前ら考えろ!!!」
カカシとナルトに憤慨したサスケだったが、当の少女は嬉しそうに顔を綻ばせている。
「サクラ。素敵な名前ですね。有難うございます!」

予想外に感激する少女に、サスケは声をつまらせた。
髪の色から桜の花を連想しての、全く単純な考えだ。
これほど喜ぶのなら、もうちょっと気の利いた名前を言うのだったかと、少しだけ思った。

 

 

 

「ックシュン!」
「サスケくん、寒がりね。暖房強めようか」
「・・・お前が異常なんだ」
サスケは袖無しの服を着るサクラを横目にむくれて言う。

サスケの自宅のリビングルーム。
二人は並んでソファーに座っているが、先ほどからクシャミを連発するサスケと違いサクラは平然とした顔だ。
負けず嫌いのサスケとしては、何となく面白くない。

「大体、見ているだけでこっちが寒くなる。他の服を着ろ!」
「でも、私これ一着しかないの。壷に戻ればあるけど、サスケくんの願いを叶えるまで戻れない規則だし」
「じゃあ、これで買って来い」
サスケは投げやりに財布の金をサクラに渡す。
親の遺産で生活しているサスケは、特に無駄遣いをすることもなく金に困ったことはない。
その金を見るなり、サクラは瞳を輝かせた。

「明日はサスケくんとショッピングね!!!」
「・・・え」
「嬉しいーー!!!」
唐突に抱きつかれ、サスケは慌てて体を引き離そうとする。
「ひ、ひっつくな!!それに買い物にはお前一人で・・・」
「お腹すいたね」

立ち上がったサクラはサスケの言葉を無視してすたすたと歩き出す。
向かう先はキッチンだ。
残されたサスケはただ呆然とした顔でサクラの後ろ姿を見送る。
計算してやっているのだとしたら、もの凄い才能だった。

 

 

「・・・何だこれは」
「焼き魚ですv」
サクラが笑顔で答えるのと同時に、サスケはその皿をひっくり返していた。
「お前、俺を殺す気かーー!!!」
「キャーー!」

サスケの剣幕に、サクラは頭を抱えてしゃがみ込んだ。
足下に転がるのは、焼きすぎて墨となった魚のなれの果て。
「料理っていうのは、こういうことを言うんだ!!!見てろ!」

慣れた手つきで包丁やフライパンを扱うと、サスケはフルコースのディナーを作り上げる。
スープに始まり、サラダ、魚料理、肉料理、デザートまで。
レストランで並ぶものよりも、よほど美味そうだ。

 

「どうだ!」
「美味しいーーvv」
自慢げに言うサスケに、サクラは歓喜の表情で答えた。
料理をほおばるサクラは、恍惚とした顔でフォークとナイフを握り締めている。
椅子に座り一息ついたサスケは、はたと気付く。
サクラのあまりの料理の下手さに、つい自分が全てをしきってしまった。

「サスケくん、天才!天才よ!!私、今までこんな美味しいもの、食べたことがないわ」
「・・・そうか」
「本当―!もー、幸せ!!!」
おだてられて、サスケはまんざらでもない顔になる。

以降サクラがキッチンに立つことはなくなり、どうしてかサスケは毎日二人分の食事を作る羽目になってしまった。


あとがき??
な、長いので一回切ります。
パラレルは楽しいですね。
サクラ嬢、最強・・・・。のだめ化してます。
ちなみに、服装は『ハクション大魔王』のアクビちゃん。(古!)


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